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SS 溶けかかった雪だるまは、どうしてこんなに物悲しいのだろう。#ストーリーの種

 大雪が降った日に太郎は雪だるまを作る。炭で目鼻をつけると立派な顔だ。太郎は嬉しくなり雪だるまに抱きついたが、冷たすぎて家に走って戻る。太郎は雪だるまが好きだ。

「――太郎、太郎」
 寝ているとゆさゆさゆすられた、眼をあけると雪だるまが起こしている。驚くが母親の声なので、怪しみながらも起きて朝飯を食べた。囲炉裏には雪だるまが並んでいた、囲炉裏は炎で暖かいが、雪だるまは溶けないのが不思議に感じる。

「なにを呆けている、薪割りしろ」
 雪だるまの父親に命令されて外にでる。昨日の雪だるまを作った場所を見ると無い。首をかしげながら太郎は薪を割った。

「太郎、遊ぼう」
 隣家の花子だ、ふりむくと雪だるまだ。どうやら雪だるまの国に来たらしい。夢を見ていると感じると太郎は、薪割り鉈で雪だるまを割ってみる。白い雪だるまの頭が半分に割れる。中も雪が詰まっていた。雪だるまの国に来たので自分の国に帰りたいと願う。

「おらの家に戻らねば」

 自分の故郷を探すために山を目指して歩き出す。後ろで騒いでいる声がするが無視をした。山を越えれば隣村がある、そこで自分の村の場所を聞こう。初雪なので山はうっすらとしか雪がない。山頂を越えて隣村に行くと村人が並んで待っている。

「おらの村はどこだ?」
 隣村の村人は人間だったが太郎を捕まえると座敷牢ざしきろうに入れた。

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「花子は死にました」
 太郎の父親が悲しげだ、息子がいきなり隣家の子供に切りつけて殺して逃げた話をする。父親は太郎に話を聞きたいと申し出る。座敷牢ざしきろうに行くと寒かろうと手火鉢が置いてあった。そこには雪だるまが置いてある。溶けかかった雪だるまは、どうしてこんなに物悲しいのだろう。

 太郎はどこを探しても見つからない。

終わり


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