ご免侍 二章 月と蝙蝠(二話/三十話)
あらすじ
銀色の蝙蝠が江戸の町にあらわれる。岡っ引き達が襲われていた。
同心の十手は身分の印で盗まれた場合は厳しい処分がある。岡っ引きのような雇われた男達の持っている十手は武器でしかない。鍛冶屋で作らせたりする。私物と同じだ。どこかに落としたのと同じだ。
「なにか問題でもあるのか」
「上がうるさいからな、そんな奴らを使うなと言われる」
商売道具を盗まれる男は信用できない。当たり前の話だ。
「平助はくびになるのか……」
「表だって働けないな」
一馬は困惑しながらも岡っ引きが居ない不便さを考えていた。ただの下人として使えるなら、あまり変わらないとも思える。
「それと襲われた岡っ引きは、銀色の蝙蝠を見たと言っている」
「なにかの判じ物か」
「さぁな、ただ蝙蝠を捕まえようとして殴られた」
「うーん、奇妙な話だな」
一馬は立ち上がると屋敷に戻る事にした。琴音が、一人で留守番している。彼女は体術を使えるのは判ったが、武士に捕まれば逃げられない。殿様に会いたいと言う割には、のんびりとしていた。
「俺の方でも調べてみるよ」
別に平助の事が心配なわけじゃないが、銀の蝙蝠に興味を持った。自分も町人の格好をして夕刻に出歩けば銀の蝙蝠を見つけられるかもしれない。
その時はノンキに考えていた。
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