![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/122767989/rectangle_large_type_2_415e69097a7a3f94646d88cfcc4df088.jpeg?width=1200)
ご免侍 二章 月と蝙蝠(五話/三十話)
あらすじ
銀色の蝙蝠が江戸の町にあらわれる。岡っ引き達が襲われていた。
「もし、どうかしましたか」
背後から女の声がする。油断なく体を回すと二十歳くらいの芸者が立っていた。小顔で幼く見える女は、黒に金の刺繍が入った豪華な着物で、どこかのお座敷の帰りにも見える。
「蝙蝠が居た」
「蝙蝠なんぞ、どこにでも飛んでますよ」
「それが銀色の蝙蝠で」
「そんな蝙蝠なんて見たことないわね」
扇子を取り出すと口元を隠して笑う。それが嫌みに見えないのは、誘うような目のせいだ。男を魅了するように怪しい力を持っている。
(見る限りは刀も持っていない)
この芸者が犯人か、とも考えたが刀を隠し持てるわけもない。
「ねえ、お前さん。男前だね、飲んでいかないかい」
「それは、ねがってもない」
頭をぺこぺこ下げると、先に立って歩く芸者の後についていく。よくある酒に水をまぜて飲ませる飲み屋かもしれない。枕芸者で、客を探していたのかもしれない。
(どちらにしろ、敵のふところに飛び込んでみよう)
一馬は用心しながらも、どこかで期待をしていた。男のスケベな心もある。
(こんな良い女を抱ける)
と思うだけで血が上る。まだ若い一馬は人並みに女に興味があるし、抱きたいとも思っている。でもなぜか琴音には、その気にならないのだ。
(不思議だ、やはり気品のせいかな)
どこか自分とは別の世界の女にも感じていた。触れてはいけない女、そんな風に感じていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1700995510882-IHuEW87YvE.jpg?width=1200)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?