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ご免侍 二章 月と蝙蝠(二十話/三十話)

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あらすじ 
銀色の蝙蝠こうもりが江戸の町にあらわれる。岡っ引き達が襲われていた。芸者のお月が一馬かずまに傷を負わせる。

琴音ことねは、お家騒動に巻き込まれていそうですが……、城を目指す予定です」
「西の城だな、行けば判るのか……それとも」
「お爺々様じじさま、しばらくは今のままで」
琴音ことねを手放すのが惜しいか」
「私は、琴音ことねへの恋慕はありません」
器量きりょうよしだろうに」
「彼女には目的があります、それを邪魔するつもりはありません」

 一馬かずまの疑念は、琴音ことねがもっと他の人を頼らない理由だ。大烏おおからす城の城主に会うのが目的ならば、書状を書いて送り、出迎でむかえてもらえばいい。それも出来ないと言うならば、城内にいる勢力が敵と味方に別れていると想像できる。

(誰も信用できない、だから俺にしか頼れない……)

 偶然だ、一馬かずまがいなければどこかに連れ去られ殺されていたかもしれない。一馬かずまを信用するしかなかった。一馬かずまは哀れな運命の琴音ことねを、守るのが天命に感じていた。

「お前もたいがい親父に似てるからな、無理するなよ」
「おねがい、いたします」

 たたみに額をつけて深々と頭を下げた。

 藤原一龍斎ふじわらいちりゅうさいは、孫を見ながらにやりにやりと笑っている。

「なに、のらくらとごまかす、あとお前の分だ」
 老人はふところから小判の包みを出すと孫の前に置く。

「前の仕掛けの金ですか」
「ああ、どうやら南蛮なんばんからの密輸が横行して怪しい薬が江戸でも流行っている。天狼てんろうは、それを止めたかったのだろうな」

#ご免侍
#時代劇
#月と蝙蝠


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