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SS 夜の蜘蛛【命乞いする蜘蛛】 #毎週ショートショートnoteの応募用(500文字くらい)

 前足をスリスリ、蜘蛛がじっと男の顔を見ている。

「命乞いする蜘蛛か……」

 前足をこするのは蜘蛛の習性だ。夜の蜘蛛は縁起えんぎが悪いから、よく殺された。男は叩きつぶす手を止める。

「どうぞ、お許しください」

 庄屋しゃうやの旦那が、手を前に出して命乞いする。

「顔を見られたから……」

 背中から横腹を突き刺した。男は夜盗だ、夜の蜘蛛は泥棒に入られる縁起が悪い生き物。

(確かに、この家じゃ縁起えんぎが悪いな……)

 畜生働きをする夜盗は、庄屋から金を盗んで逃げ出すと、どこかで呼子笛よびこぶえが聞こえる。銭箱をかかえたままでは逃げられない。道ばたに捨てる。

(ただ殺しただけ……)

 朝まで農家の納屋なやで隠れていると、つっーっと蜘蛛が頭に降りてきた。

「朝蜘蛛は、縁起えんぎがいいからな」

 男はパンっと手を叩いて蜘蛛をつぶす。とたんに納屋なやの戸が開くと目明めあかかしが怒鳴る。

「御用だ!神妙しんみょうにしろ」
「ああ、わかってるよ縁起えんぎを殺したからな」

#毎週ショートショートnote
#時代劇
#命乞いする蜘蛛

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