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参道を登る

山道を登る、一歩一歩が重い
まわりに人が居る場合もあるし
居ない場合もある
自分は、ゆっくり歩くだけだ
参道のところどころに、休む場所もある
適度に休んで、また登り始める
はじめは、父母が居た
母は亡くなり、参道の途中の墓地に埋めた。
しばらく、父と登っていたが、
その父も力つきるように亡くなる
仕事をして衣食を得る事もあるが、
登ることはやめない
「いらっしゃいまし」
茶屋で休むと給仕に若い娘がくる
愛想の良い娘は、テキパキと注文を取り
店の中を飛び回る
しばらく滞在をしながら
ここで仕事をした
娘といつしか絆をもち
息子が生まれる
歩けるようになると
一緒に参道を登りはじめた
「俺はここに住む」
息子はいつしか大人になり、登ることを拒んだ
母と一緒に住み、ここで暮らしたいと
自分は、ここで別れると言い残すと
家族を置いて登りはじめる
なぜ登るのか、自分でも判らない
父から教えられたわけでもない
脚が動くのだ
この切迫感を伝える事はできない
ひたすら登る
足腰も弱り、仕事ももらえなくなるが
それでも登り続けた
目もかすみ弱った体で登ると
頂上についたようだ
目的の地だろうか、参道の最後の一段を踏むと
ふわりと浮いた感じがした
「途中で落ちたようだね」
「頂上なんて見えないのにね」
落ちた老人を囲みながら、一人が山を見上げる

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