SS 手渡されたのは光る種。 【#シロクマ文芸部投稿用】
手渡されたのは光る種。それは白く輝き美しい。私は大事に種を手で包んだ。眼を開くと涙が出ていた。
「おい、墓参りの時間だろ? 」
私を優しくゆする大きな夫の手で起き上がる。母が死んだときは悲しくて気分が落ち込み、家事すらできなかった、医者から軽い鬱と診断されて薬を飲む。
「お母さん、大丈夫? 」
中学生の娘が私を心配してくれる。母から渡された光る種は、この子にも受け継がれたと思いたい、やさしい家庭、やさしい夫、やさしい娘……
子供の頃は父母に反抗した、自分を傷つけた事もあった、自暴自棄で死を選ぼうとした。でも私は生きている、母から手渡された光る種は、娘に受け継がれる。光る種は無くならない、きっと子供達にも受け継がれる。
春の暖かい日に、都市を離れて墓参りをする。さわやかな空気、美しい青空、そして白く長い飛行機雲?
「おい、大変だ! 首都にミサイルが! 」
叫ぶ夫の背後で閃光が輝き、全てを焼き尽くす、都市のあった場所には巨大な黒い雲が立ち上がる、キノコのような雲はおぞましい。
「黒い種………」
そうだ人類は黒い種も作っている……全てを破壊する衝撃波で私の意識が消し飛ぶ。光る種を大事にしてください、それはとても貴重で美しい。