見出し画像

SS あるべき成仏宴 #毎週ショートショートnoteの応募用

(お囃子♪)
 落語家が高座に座ると誰も居ない客席を見つめる。

「毎度、ばかばかしい話をさせていただきます」
 深く頭を下げてひたいを高座につけたままだ。

「このお話は、あるべき成仏案と言いまして、江戸時代から伝わります」
 伏せたままの顔を上げない。

「成仏といいましても、悪い事をした奴は成仏できません。だから悪人は最後に金を持ってあの世にいきます」
 客席には人影もないのに咳払いの声がする。

「なんでも金です、三途の川でも金が必要です、渡し守に六文銭が必要なので、お棺の中に入れます」
 ざわつく客席

「だから悪い奴ほど、大金を持って鬼に賄賂わいろを使います。鬼に手加減してもらえます。」
 感嘆かんたんの声がする。

「つまり、あるべき成仏案とは、小判を詰めるだけ詰めて埋葬される事です」
 顔を上げた落語家は、すでに鬼の顔だ。

「地獄の沙汰も金次第…………」
 もちろん、その小判を持って三途の川は渡れない。船が沈んでしまうので。

(お囃子♪)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?