磯女 (12/15) 【幸蔵の旅】
あらすじ:鬼の策略で海の底に沈む幸蔵
沈みながら頭上の光を見る、もう手が届かない。溺れ死ぬ、静を助けられない、姉を助けられない。くやしさと悲しさで腹の下から痺れるような感覚が広がる。
(ねえさま、しずか……)
目をつむる、息苦しさから肺から空気があふれ口から泡を吹き出した。息ができない、もがくように手を上にあげる。その手を白い手が握る。
(人の子……ではないな。天狗が何をしておる? )
顔は女だが腰から人は蛇だ、磯女が幸蔵に向かって息を吹きかける。大きな泡ができると幸蔵を包んだ。
「はぁはぁ……、ありがとう」
「人の子なら食らおうと思ったが、天狗はまずいからな」
「ここに鬼は住んでおりますか」
「なんだ鬼に会いたいのか、われが連れて行こう」
ぐいっと腕を引っ張られると凄まじい勢いで海の中を泳ぐ。不思議な事に泡は壊れずに幸蔵を包んだままだ。
岸辺に近づくと海面に向かって泳ぐと海面から躍り出る。まるで魚が海面からはねるように幸蔵が飛び出た。
「小僧、鬼を退治しろ。我の餌を横取りするからな」
ケラケラと笑うと磯女は、海の中に沈む。彼女は鬼と対立関係で気まぐれに幸蔵を助けてくれた。
幸蔵は自分の黒い羽を広げると、鬼に捕まった静を探す。蜃気楼の島は、近寄れば眼下に一望できた。仙人が白く輝く雲に乗って仙人が幸蔵を呼んでいる。びゅんと素早く仙人のそばまで飛んでいく。
「おーい、おーい」
「仙人様」
「ここは、鬼神の島のようじゃ」
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