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雑多な怪談の話

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#短編小説

SS 梱包された劇 #爪毛の挑戦状

畳に座る。ふすまに夕日が映ると朱く染まり蝉が鳴いていた。「よしえ」と母の声がする。私は黙ってまま包丁を握る。 いつからだろうか、私は自殺する夢を見ていた。朝に起きると細かい部分は忘れている。でも夢の中で私は自分を殺していた。手を切って血を流す。畳を真っ赤にして血だまりの中で幸せを感じる。もう何も悩まなくても良い。 朝になると私を起こす手を感じた。「起きなさい」布団から出ると学校に行く。田畑しかない道を歩くと、いじわるをするクラスの女子が近づく。「服ダサイ」「ブス」なぜか短

SS 水槽の歯 #爪毛の挑戦状

昔の水族館に人魚ショーと言うのがある。人が暗い水槽の中で人魚のコスプレで泳ぐ。今でもマエーメイドショーはあるが当時とはまったく違う。私が見たショーは暗く悲しい記憶が焼き付いている。何故だろうか? 「これが人魚の歯です」なじみの古道具屋で冗談を言われたと解釈した。「人魚が見れますよ」半笑いの私は買えなくも無い値段で購入した。金魚用の水槽を用意する。申しわけ程度に水草を入れて人魚の歯を入れる。水槽の歯は底に落ちるとぶくぶくと泡を出していた。 翌日になると、メダカくらいの人魚が

SS 夢のみんなで #爪毛の挑戦状

夢を見た。夢のみんなで帰ろうよ…その言葉を…口の中で繰り返す。今は誰も居ない教室を見回すと暗い部屋の中に孤立している僕が居る。先生が教室に入ると着席するように言われる。先生は「悲しい事故でした」そう語ると教室を見回す。「このクラスは今日で終わりです」僕はみんなが居ない理由を思い出す。バスの事故だ。旅行で横転したバスはガードレールを破壊して崖下に落ちた。ぼくだけが後部座席の唯一の生き残り。先生は僕に手を差し出す。僕は手をしっかり握るとゆっくりと教室を出る。 「寝てたの?」同級