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雑多な怪談の話

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2023年12月の記事一覧

SS 夜光おみくじ #毎週ショートショートnoteの応募用

 拍子木が、カーンカーンと鳴ると、人が集まってくる。深夜の公園で紙芝居が始まる。 「大山鳴動するが、ネズミも居ない。剣豪の宮本武蔵は、九尾の狐を退治しにきた宮廷に、人の気配が無いことを不審に感じる!」  おなじみの狐退治の物語が終わると、客は紙芝居屋から、何かを買い求めいた。 「何をしているんだ……」  うっすらと紙芝居の記憶はあるが、こんな夜中に客を呼ぶわけもない。終電間際で帰って来て、コンビニに立ち寄って深夜の公園を横切っていると、彼らを見つけた。  客が居なく

SS プールの紅トーナメント #毎週ショートショートnoteの応募用

「プールの紅トーナメントを開催する!」 「女子ランキングするの?」  じりじりと暑い神社の境内で、いつもの三人組が漫画を読んだり、ボールで遊んでいる。小学生の夏休みは最高だ。 「紅って女の子? だれが好きか告白?」 「トーナメントだから、投票?」  小太りの子が、ひょろい子に聞いている。眼鏡の僕は黙っていた。ひょろい子は、早熟なのかクラスメイトに興味津々だ。  白黒テレビで美人コンテストを見たと思う。早速みんなで美人と思う子の名前を告白する事にした。 「プールで見た

SS 梱包された劇 #爪毛の挑戦状

 深夜になると劇が始まる。  男の前で少女が手を広げて頭をさげる。ゆるく緩慢な手足の運びは糸で操られているように、ぎこちない。 「もういい……」  男は手をふると少女を下がらせた。次の少女が踊りを始めるが男は誰も選ばない。 「おりませんか」 「舞台に出せる子はいないよ」 「またきてください」  場末の酒場で少女を踊らせて一流になりそうな女優を探しているが、そうそう見つからない。男はあきらめたように自分の部屋に戻ると、箱が届いていた。 「郵便か……」  送り主は、

【掌編小説】リレー小説⑤(これってひよこの挑戦状?)#電車にゆられて(Love the PTA Toshi Inuzukaからの続きで)

 暗いトンネルを走っている最中は、車内に薄暗い電灯がついている。車掌が、ゆっくりと後方の車掌室の車両に向かう。  たまにゴトゴトと音がするくらいで静まりかえった車内には、六割くらいの客がいるのに話し声も無い。列車の天井を見ると古くさい水色の扇風機が回転している。 「あんた、弁当を買ったのか?」  通路をはさんだ横の席の男が俺に声をかけたきた。 「いや弁当は買ってない」 「そうかぁ、ここの駅弁はおいしいよ」  それだけ言うとまた食べ始める。しばらく見ていると延々と食べ

SS 家出の少女 【ありがとう】 #シロクマ文芸部

 ありがとう、ごめんなさい、さようなら。 「家出ですか……」 「家出です」  行方不明者届を受理した、警察官の私は事情を聞くために、その家に立ちよる。母親は娘を心配している様子はない。書きおきを見せてもらうと稚拙な字で殴り書きされていた。 (毒親ってヤツかな……) 「高校生の娘さんですか」 「そうよ」 「友達の家に泊まってるかもしれませんね」 「そうね」  うつむいている顔は、悲しそうにも見える。ショックで反応が鈍い場合もある。 xxx 「どうだった」 「若い母

【掌編小説】リレー小説③(日出詩歌さんの続きです)#電車にゆられて

 水車の音が小さくなり音が消えた。目の前の女性は無表情に指を突きつけたままだ。凝固した世界は息するのもむずかしい。息が荒くなる。 「……俺は死んだのか」 「まだ生きたいんだ」 「死にたくない」 「生き返っても悪い事しかないかも?」 「俺はなんで死んだ」  女性の顔は、ゆっくりと輪郭が崩れるとめまぐるしく相貌が変化する、少女だったり主婦だったり、老婆だったり娼婦だったり。 「やめてくれ、やめてくれよ」 「あなたが殺した人たちよ」 「ここは地獄じゃないのか」 「あなたは誤解

SS 白骨化スマホ #毎週ショートショートnoteの応募用

 病室は薄暗く祖父は死ぬと思う。 「ちょっと見てて」 「うん」  母が病室を出て行く、私はスマホをいじりながら気のない返事をする。祖父は昔は反社だったと聞いた。私は、この人を知らない。 「今もそんな根付があるのか」  四人部屋で、たまに咳が聞こえるくらい無音だった。いきなり祖父に声をかけられて、心臓が飛び上がる。 「なに、お……おじいちゃん」 「それだよ」 「スマホのアクセサリー?」 「骨なのか」 「そう骨みたい」  スマホのストライプに白骨化スマホが、ぶら下がっ

SS 崩れた蔵【冬の色】 #シロクマ文芸部

 冬の色はモノクローム、雪があつくふりつもり外界の音を吸収する。車が走ることも難しく、たまにじゃりじゃりと鉄のチェーンの音が響く。  玄関から外に出ると古い蔵が左に見える。雪の重さで壁が崩れていた。どれくらい昔に建てられたのか判らない。蔵全体が黒く、その上に真っ白な綿のような雪がふりつもる。 「みっちゃん、お手伝いして」  母の声だ。私は蔵を横目で見ながら家に入ろうとして、蔵から誰かに見られていると感じる。 「おかあさん、蔵に何が入っているの」 「もう何もないのよ、空