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シロクマ文庫用と青ブラ文学部等の企画参加作品

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企画された作品を置いときます
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

SS うちのメロンパンは幼なじみと仲良しになる幸せのお人形だった話【#ボケ学会のお題】

 メロンパンに手足がついている。手作りのアクセサリーはお気に入りで通学カバンに大切につけていた。 「遅刻しちゃう」  いつもの曲がりかどを無意識で走り抜けると男子がいた。頭から腹に突っ込むと二人で転んでしまう。 「ごめーん」 「痛てええよ……甜芽か」  クラスの不良はリョウスケだ。 「げ!」 「げ!ってなんだよ」  幼なじみで小さい頃から知っているが中学に入ると背がでかくなる。私は背が低いので並んで歩くと小学生に勘違いされた。 「悪かった、でもあんたも悪い」 「

SS 約束【織姫妖怪】#毎週ショートショートnoteの応募用

 暗いお堂の中はひんやりと冷えている。天井には星の配置が描かれているが黒ずんでいてよくわからない。中央に天の川と両脇に彦星と織姫が描かれていた。 「江戸時代くらいですか」 「それより少し前です」  夏の課題で近隣の寺院でレポートを書く事にした。男女の学生は暗さに眼がなれると埃だらけの床板や雑然と置かれた木の箱が散乱している部屋を見回す。 「この地域は織姫伝説があるんです」  天井を指さして男を見る。男は不安げに眼を泳がせる。 「どんな伝説なんです?」 「禁忌の恋物語

SS 彦星のバカンス【彦星誘拐】#毎週ショートショートnoteの応募用

「減光してますね」 「やはり崩壊寸前なのか……」  世界中で彦星(アルタイル)が暗くなるニュースが流れる。天文台や宇宙観測望遠鏡が調査した結果、崩壊すると騒がれた。  そして7月7日、彦星誘拐されたように夏の夜の天空から見えなくなる。 xxx 「あー、彦星ちょっとこい」 「はい、天帝様なんでしょ」 「お前達の夫婦仲がいいが、年一回しか会えないと子供がつくれない」 「私が仕事を怠けたせいです、もうしわけありません」 「ん、だからな今年はしばらく織姫と暮らせ」 「かまわな

SS 藪知らず【#白いワンピース】#青ブラ文学部参加作品(800文字くらい)

 白いワンピースの少女が森を見ている。深い森は昼間も暗く奥がわからない。 「なにしてるの」 「別に……」  竹の虫かごをもった少年が心配そうに近づく。少女の表情は真剣で森に顔をむけている。 「この森はだめだよ、藪知らずだから」 「藪知らず?」 「入っちゃ駄目な土地」 「そうなんだ」  真っ白なワンピースは上品でお金持ちの家の子に思える。きっと東京から来たと思う。手でおいでおいですると素直についてきた。 「どこに住んでいるの」 「あそこ」  近くに瀟洒な洋館が建って

SS 雨ボケ【#ボケ学会のお題】

 チャンカチャンカチャンカ  チャンカチャンカチャンカ  チャンカチャンカチャンカ  ハイ! 「雨です」 「傘です」 「二人あわせて雨がっぱ」 「いやー、雨傘じゃないんですよ」 「なんで、カッパなんでしょう」 「昔バイトで誘導員してた時なんですよ」 「大変ですね」 「雨の日は傘をさせない」 「両手が空いてないと誘導できない」 「だから透明なビニールの雨がっぱをつけてました」 「あー見たことあります」 「これがまた蒸すんです」 「通気性悪そうですね」 「冬はいいんです、あ

SS 初夏の桜【#手紙には】シロクマ文芸部参加作品(900文字位)

 手紙には、会いたいと書かれていた。 「おかあさん、これどうしよう」 「そうね、お棺にいれましょうか……」  祖母の遺品を整理すると封筒に入った便箋を見つける。手書きの文字は、なれないと読めないが読み進めていると恋文なのは判る。 (書いた人は誰だろう……)  私はその手紙を自分の机にしまった。とても思いが伝わったので何度でも読み返したくなる。 「こちらでも桜が咲いています。故郷の桜も咲いているでしょうか、君と一緒に見たあの景色が懐かしく感じます。戦争が終わったら、桜

ボケという犬【#ボケ学会のお題】(600文字くらい)

 ボケはボケと呼ばれた事を気にしていない。性格がおとなしいせいか、お手もおあずけもできない。何かを言われると尻尾をふって愛想した。 「もうあんたってなんにもできないのね」  娘はボケをかわいがったが雑種なので、ペット屋で買ったミニチュアダックスフンドが好きだ。 「あんた、ボケも散歩させてよ」 「外は雨じゃん」  娘はしぶったが小雨ふる夕方に一緒に散歩する、ミニチュアダックスフンドは、嬉しそうに先を急ぐが、ボケはいつもの通りのろのろと歩く。 (本当に変わった犬ね……)

SS アルバイト【#伝説の1分】 #爪毛の挑戦状

 ※性的な描写があります。  暗い部屋の布団の上で女が寝ている。その周囲に数人の男達が彼女を見まもる。ショーは、まだ始まっていない。  この男達の目の前で性的な行為を見せる仕事をはじめた。本番、演技は一切ない、気分が乗らなければ終わってもいい、そんな約束だ。 「おねえさんバイトしない?」  チンピラじみたセンスのかけらもないシャツの若い男が声をかけてきた。 「すいません、働いています」 「そうじゃないよ、夜のバイト」 「バーですか?」 「いやもっと深い仕事……」