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シロクマ文庫用と青ブラ文学部等の企画参加作品

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企画された作品を置いときます
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

SS 小さなお店【朧月】 #シロクマ文芸部

 朧月のせいか夜の帰り道が暗く感じる。職場の仕事に嫌気を感じているが転職も難しい。 「こんなところあったかな……」    いつもの商店街を通ると、横の細道にネオンが見える。昔はバーがあった場所だ。かすむような、にじむようなネオンにつられて入ってみた。 「いらっしゃい」  やたらと背の高いドレスの女性が壁に背をつけて立っている。腕が太い。男だ。愛想笑いで足早に逃げた。 「なんだ……ここ」  酔客がやたらにいる。フラフラと肩を組んで歩くサラリーマンやきらびやかなドレスを

卒業

シロクマ文庫の読み上げテスト

SS 明日がある 【卒業の】 #シロクマ文芸部

 卒業の時が来る。あたたかく甘いほうじ茶を口にふくみ、こたつで足を伸ばす。 「清美、学校に行く時間よ」 「もうちょっと」 「本当に遅れるから」  母が眉をひそめる、ぐずぐずとなんでも先のばしにする娘に手を焼いていると思う。自分でもなんで、こんなに腰が重いのかわからない。 (だって今の状態が好きなんだもの)  猫がこたつから顔をだす。茶トラの頭をなでながら至福の時を満喫する。 「ミー子は、学校いかなくていいよね」 「いい加減にしなさい!」  ぐいっと腕を引っ張られる