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シロクマ文庫用と青ブラ文学部等の企画参加作品

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企画された作品を置いときます
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2024年1月の記事一覧

SS 窓を叩く音 【布団から】 #シロクマ文芸部

 布団から猫の手が出る。横向きで寝てると指でさわれる。しばらくさわっていると、すっと引っ込める。 「猫を飼ってたの?」 「いないよ」  飼い猫ではなくて近所の猫だ。二階の窓を開けていると入ってくる。 「窓を開けて寝てるの?」 「開けないと叩くのよ」  夜に鍵をかけない、布団で寝てると静かに布団に入ってくる。  今日は親友と二人でお泊まりだ、二人で一杯しゃべって、とても楽しい。夜遅くなり窓の鍵をあけた。親友の不審げな雰囲気で、また鍵を閉めた。  二人で布団に入って、

硝子の風鈴 【書き初め20字小説】

縁側で姉の硝子風鈴が鳴る。命日が近づく。 来週に無料にします。レギュレーションのために有料化です。  夏の風鈴は僕も好きだ。 「義男、風鈴どこにあるの」  夏だと言うのに、布団で寝てる姉の白い顔は死期が近い事は判る。  かすれた声で風鈴の事ばかり気にしていた。 「去年、僕が落としてこわした」 「……そうだったわね」 「買ってくるよ」 「うん……」  ねえさんは風鈴の小さな音が好きだ。どんなに暑くても涼しくなると笑う。硝子屋に行くといつものおばあさんが座っている。

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