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硝子の風鈴 【書き初め20字小説】

縁側で姉の硝子風鈴が鳴る。命日が近づく。

来週に無料にします。レギュレーションのために有料化です。

 夏の風鈴は僕も好きだ。

「義男、風鈴どこにあるの」
 夏だと言うのに、布団で寝てる姉の白い顔は死期が近い事は判る。
 かすれた声で風鈴の事ばかり気にしていた。

「去年、僕が落としてこわした」
「……そうだったわね」
「買ってくるよ」
「うん……」

 ねえさんは風鈴の小さな音が好きだ。どんなに暑くても涼しくなると笑う。硝子屋に行くといつものおばあさんが座っている。

「何が欲しいんだい」
「風鈴」

 義眼をビー玉にしているおばあさんは見えない目で僕を探る。

「何色だい」
「青くて魚が泳いでいるのを」

 吊ってある風鈴を棒で取ると僕の手に握らせる。

「……これでいいよ」
「六十銭だよ」
 
 家に戻って縁側に風鈴を吊す。風が少しだけ吹くが音が鳴らない。

「絡まってるのかな」

 椅子を使ってまた風鈴を取ろうとすると、姉が叫んだ。

「アブナイ」

xxx

「義男、ごめんなさいね」

 姉は薄く青い寝間着姿で僕に謝る。縁側から落ちた僕は敷石で頭を打って死んでしまった。毎年の命日に姉は僕のために風鈴を吊す。

 縁側に座って姉と風鈴を見る。チリンチリンとなる音で僕は涼しげに感じた。




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