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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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#小説

SF 願い

 修道士が白いチョークでレンガの床に円陣を描いている。 「あと少し、あと少し……」  つぶやく言葉は疲れている。円陣ができあがると文字を描く、ローマの数字や占星術の記号をガリガリと地面にきざむ。 「出来た……」  白い円陣は魔方陣で、悪魔からの自分の身を守るための仕組みだ。彼は羊皮紙を取り出すと古い呪文で悪魔を召喚した。赤黒く床が光ると地獄の門が開き不気味で巨大な顔がゆっくりとせりあがる。 「なにが望みだ」 「俺を未来に連れて行ってくれ」 「変な願いだな」 「俺は…

SS 俺が神になれた理由

「俺は神だ」  指でくるくるとハンドスピナーを回すがアマゾンで買った銀色の丸い磁石だ。丹念にまわしていると退屈しないが、こんなものでも1000円はするから、本当にアイデア勝負なんだと思う。 「それで神って何?」  眼の前にいるのは幼馴染でイトコだが、男になりたいからと性転換手術を考えているボブカットの少女で丸い目を大きくしながらまつ毛をパチパチさせている。 「全知全能かな?」 「なんでもできるんだ」 「嘘ぴょーん!」 「それはいいから神って何」  ギャグを入れて笑わ

SS 戦場の少女【#戦国時代の未来】 #爪毛の挑戦状

 ザムザ844は、センサーから入力したデータをフィルターで選別する。 (人は居ない)  思考はあるが感情は無い。そもそも感情が判らない。気分の高揚なのは判る。楽しい、嬉しい、悲しい、怒り。その状態になると行動にメリハリがつく。 (ノイズに思えるけど……)  戦場は長く爆撃されたせいで荒廃している。鉄くずと骨のかけら、人だったものが銃を握っていた。ゆっくりと歩く、敵がいれば……。ザムザ844は、人の形をした兵器だ。  少年はとぼとぼと歩く少女を見つけると駆けよる。敵兵

SS くされ縁【お題:#腐れ縁だから】青ブラ文学部参加作品(550文字位)

 出会いは偶然で永遠に思える。海の中でそっと触れた時に、つながれた。 「私と死のう」 「わかったよ」  何回も繰り返す言葉。海を散歩すれば気が晴れて忘れる。彼女が落ち込み、僕がなぐさめる、くされ縁だと思う。いつもと同じで夕暮れの中を歩けば気分がかわるはずだ。その日も一緒にでかけると大きな波がうねるように砂浜を洗う。彼女は嬉しそうに近寄っては逃げた。 「危ないぞ」 「平気よもう平気」  波にさらわれる、いやさらわれるのが運命だと感じる。 「おなかも大きくなったから……

SS 人の居ない街【#風薫る】 #シロクマ文芸部

 風薫る だれもおらぬ 道を吹く  Λは、無機質な通路をぶらぶらと進みながら、人間に習った俳句を口ずさむ。 (今日は、きゅうりとトマトを植えるかな……)  空気が人間の体感で最適の温度と湿度を保っている。花の香りがするのはΛが花を育てているせいだ。  紫陽花、花菖蒲、薔薇、薫衣草、色とりどりの花は人工で作られた種を利用している。 (人間は何をしたかったのかな……) 「やぁΛ」 「γ、今日は動けそうかい」 「無理だね」 「部品を作ろうか?」 「このままでいいよ」

SS 帰還 【青写真】 #シロクマ文芸部

 青写真が、机に置かれている。 「間取り図ですか」 「かなり古いね」  図面に描かれた線は、輪郭もわからないくらいに古くかすれている。半世紀前の図面から、奇妙な隠し部屋があるとわかる。 「きっとおじいさんの遺産があるんですよ」 「隠し部屋か、ロマンだね」  親戚は興奮で騒いでいるが、弁護士の私は懐疑的だ。 (わざわざ隠す理由がない……)  遺産があるなら私に真っ先に知らされている筈だ。資産家の故人の男性は、何かの特許で財をなした。あり余るほど金はある。 「さっそ

SS タイムスリップアレルギー #爪毛の挑戦状

 気がつくとタイムスリップをしている。医者からは一種の記憶障害と診断された。実際に経験しても、実体験をしたように感じない。 「タイムスリップアレルギーですね」 「なんでそんな事が……」 「記憶の連続性が希薄に感じる、忘れっぽいと考えてください」  精神科を出て薬局で薬をもらう。記憶喪失とは異なり、思いだせるのに他人事だ。夜に寝て、朝に起きると三日くらい経過している。 「昨日は……計画書を作ってたか……」  会社で仕事をしていても、仕事の内容は、覚えているのに仕事をした

SS 終わりの日1 台にアニバーサリー #毎週ショートショートnoteの応募用

「ありがとうみんな、さようなら」  演舞台で彼女は、ほほえんでいた。幸せそうな彼女は不幸だった。 「なんなんだ、不公平だよ」  彼女は俺の推しだ。二周年記念のステージで、難病を告白する。  演舞台にアニバーサリーステージの垂れ幕も華やかだ。みなが祝福する最高のステージになるはずだった。 「なんでだよ……」  彼女は闘病のために引退をするが、長く生きられないと判っていた。推しが死ぬ。それだけで俺は絶望する。 「どこかに神様いねえのかよ……」 「いるよ」  ふと顔をあげ

SS いつもの彼女【異口同音&幼児語&スーパーヒーロー】三題話枠

「銀河に替わってお尻ペンペンよ! 」  美少女戦士ラブラブムーンだ、俺はうんざりしたような顔をする。前口上がひどい。幼いというか中学生なのに洗練されていない、思考回路が小学生なのかセンスが悪く幼児語を使う。 「悪いことしちゃだめって言ってるのに! 」  こっちは悪の組織なんだがら悪い事をするのは当然だ。実際はせこい事しかしていない。今回は役所の小型家電の回収ボックスを狙い、中の携帯電話を盗み出して溶かして金を取り出す。溶剤とか作るのが大変だから割に合わない。 「窃盗だ

SS 余命200年。#ストーリーの種

 余命200年。一部の特権者だけが享受できた。一般人は50年前後で落ち着いている。俺は25歳で彼女は125歳。彼女が俺を選んだ理由は、昔の夫に似ているからだ。 「俺の親戚かなぁ? 」 「違うと思う、似てるのは雰囲気だけよ」  特権者は芸術家や研究者が中心で、財産や不動産は無関係だ、金持ちが特権者になるわけではない。国が認めた人間国宝のようなものだ。特殊な感性を持つ人たちは0から1を作り出せる。一般人は出来ないから、特権者が作り上げたものを楽しむだけの人生になる。 「俺も

SS 立方体部 #爪毛の挑戦状

 私は立方体を抱えて走る。この中に私の赤ちゃんが居る。 xxx 「私の子供は? 」  夫が悲しそうな顔をしている、もう自分にも判る。赤ちゃんは天に召されている。泣きたいのに漠然と現実を認識していない。 「それで頼みなんだが……」  夫の言葉を始めは理解できなかった、赤ちゃんを生き返らせる? 違う、赤ちゃんはまだ生きているが脳細胞に深刻なダメージがある、生命維持装置を外せば死んでしまう、だから……脳細胞を今なら生きたまま採取できる。 「まだ死んでないんでしょ?」  夫は

SS 壊れたロボット【男の子&瞬間接着剤&夏祭り】三題話枠

 夏祭り、その華やかで心が躍るイベントに僕は楽しみにしていた、でも祖母の具合が悪いので両親は参加できない。 「一人で行くよ」  両親と一緒に訪れた田舎は、もう村人が少ないのかさびれて見えた。出店もある、風船釣りや金魚すくいや綿飴に、少ないが子供や若い男女が楽しんでいた。僕はその雰囲気だけで十分だ。何を買うわけでもなく見て回る。 「おい、お前はどこのもんだ? 」 「○○から来たんだ」  僕と同じくらいの子供達が寄ってきた、外から来るものは敵だと言わんばかりの排他的な態度は、

SS ハナ大増殖 #爪毛の挑戦状

 金木犀の香りがする、甘いような濃厚な臭いはむせる。あまりに強いので口で息をする。 「なんだ? 芳香剤でもこぼしたのか? 」  ベッドから起き上がり窓を見ると外がオレンジ色だ。窓に近寄ると臭いがきつくなる、外がハナで埋まっている。  テレビをつけるとニュースキャスターが「ハナ大増殖」を連呼していた。地球温暖化の影響を報じていたが、どうやら大陸側で実験を失敗したらしい。 「金木犀にクマムシの遺伝子? 」  人間の細胞にクマムシの遺伝子を入れて、耐久性を確かめられたと怪し

SS 永久には動きそうもない、B級機関だった。#ストーリーの種

「ここがA級機関調査室だ」  薄暗い蛍光灯の下で数人がだらけている。モニターを見ているようでゲームに夢中な職員や爪を磨いているOLが居る。自分が配属されたのは、永久機関を審査して調査をする部署だ。つまりリストラ対象の職員部屋だ。 「何をすればいいんですか?」 「調査対象のメールが来たら動かないとテンプレメールをする」  永久機関は、外からエネルギーを与えないで動作をするシステムで物理学的に存在はしない、もし存在するならばそれはA級と呼ばれて登録される。現実には動かないB級