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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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2023年10月の記事一覧

ケルトの魔弾 #逆噴射小説大賞2023参加作品

題名:ケルトの魔弾  妹が殺されたのはハロウィンの夜、裸体の腹がさかれていた。額にはケルト文字で呪いときざまれている。私は成人すると警察に入隊した。 「……タイキ……セヨ……」  骨伝導イヤホンマイクは聞き取りにくい。警察用の簡易エスペラントでも、ノイズで消えそうだ。  足下に小指ほどの火蜥蜴が私の落としたタバコの火を吸っている。大きくなれば厄介だが、今は見逃す。 (ハロウィンの夜よ、魔物の力が増してるわ)  肩に小さくのっているケットシーは、まだ幼いから簡単な仕

SS 枢軸マーガリン #毎週ショートショートnoteの応募用

「おかあさん、何をもっているの……」 「枢軸マーガリンだよ」  さびた金属缶は、もうボロボロだ。 xxx  破壊されたシュトルムティーガーが道ばたでくちている、巨大な砲を使う兵士は居ない。 「にいさん、おなかすいた」 「マーガリンあるよ……」  枢軸国は終わりだ、連合国の兵隊が迫ってきた。兄は軍から提供されたマーガリンの缶を私に渡す。兄はまだ17歳だが、戦場に駆り出された。 「ごめんな。守ってやれなくて」 「にいさん……にいさん」  私を塹壕に隠すと、ドイツ新兵器

SS 「何名様ですか?」「0名です」 #ストーリの種

「何名様ですか?」 「0名です」  来た客は小柄な三十代くらいのOLに見えた。聞き間違いかもしれないが1名とだけ書いて部屋の鍵を渡した。駅前のビジネスホテル風に見せているが実際はラブホテルだ。オフィスカジュアルな雰囲気の彼女は、仕事終わりに彼氏にでも会うのかと思う。  実際はそんな事は無意識で思っているだけで、考えることもしない。しばらくすると先輩がやってきて客の事を聞かれる。 「女性に鍵を渡しましたよ?」 「何号室だ?」 「104号です……」  先輩は苦い顔をしなが

SS 壁に少々らっきょう #毎週ショートショートnoteの応募用

 壁に少々らっきょうがついている。 「おい、壁を掃除しとけよ」  妻が不審そうに自分の顔を見ている。不機嫌になる前に、そそくさとマンションを出た。子供がいたずらでくっつけたのかな? 程度にしか感じない、仕事でいそがしく忘れてしまう。 「お父さん」 「ただいま」  帰ってくると娘が抱きついてくる。もう少し年齢が上がれば近寄らなくなる。 「お父さん、キッチンの壁が変だよ」 「どうした」 「壁がなんでも食べちゃうの」 「らっきょうをつけたのはお前か」  くすくすと笑う娘は

SS 秋の空時計 #毎週ショートショートnoteの応募用

 雲に向かって腕を伸ばす、秋の空時計が光って見えた。少年はピカピカな時計が大好きだ。父親に買ってもらった時計を大事にしている。 「時間が計れる、なんて素敵な道具」 xxx 「それが、この時計ですか?」 「壊れて動かないが、お守りだ」  もう時間は計る必要が無い、試作のロケット戦闘機は地上から高速で駆け上がり、敵の爆撃機を破壊できる。前方の巨大な機関砲は、一発でも当たれば敵は爆散する。 「ご無事で」  敬礼をして発進した。  猛烈な反動で息ができない、ものの数分で敵