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#ストーリーの種

SS どんな本でも、一発で100ページ目を開ける。それが俺の特殊能力だ。まさか、これで世界を救うとは思ってなかった。そして、また滅ぼすとは。#ストーリーの種

どんな本でも、一発で100ページ目を開ける。それが俺の特殊能力だ。まさか、これで世界を救うとは思ってなかった。そして、また滅ぼすとは。俺は世界を救う英雄とも悪魔とも言われる事になる。「なんでユージョンは、ぽんこつなのよ」幼なじみの詠唱師のミアは俺をポカポカと殴る。 赤毛のミアは、俺の背中で泣いていた。俺は呆然と首都の崩壊する状態を見ながら逆に晴れやかに笑っていた。 「腐敗しているわね」ミアがつぶやく。ソドムと呼ばれるその都市は、快楽と汚辱で薄汚れていた。都市中にある宿は全

SS 溶けかかった雪だるまは、どうしてこんなに物悲しいのだろう。#ストーリーの種

 大雪が降った日に太郎は雪だるまを作る。炭で目鼻をつけると立派な顔だ。太郎は嬉しくなり雪だるまに抱きついたが、冷たすぎて家に走って戻る。太郎は雪だるまが好きだ。 「――太郎、太郎」  寝ているとゆさゆさゆすられた、眼をあけると雪だるまが起こしている。驚くが母親の声なので、怪しみながらも起きて朝飯を食べた。囲炉裏には雪だるまが並んでいた、囲炉裏は炎で暖かいが、雪だるまは溶けないのが不思議に感じる。 「なにを呆けている、薪割りしろ」  雪だるまの父親に命令されて外にでる。昨日

SS 木のふりをするのも、もう限界だった。#ストーリーの種

 木のふりをするのも、もう限界だった。お師匠様から習った木遁の術は隠れるための術で木になりきる。動物の擬死と同じで死んだふりだ。 「めっけ、太郎丸が居たよ! 」  でっかい声で椿が叫ぶ。おかっぱ頭の眼のくりくりした女の子が俺を指さす。 「まだまだじゃな、太郎丸、椿も修行を続けなさい」  仙人風の老人が杖で体を支えながらよろよろと立っている。お師匠様も歳で弟子を取るのが難しい、里の幼い子供達を教える事しかできない。 「なんで判ったんだ? 」 「だって太郎丸は、立っているだ

SS 最後のおつかい #ストーリーの種

「最後のおつかいだよ」  手渡された握り飯を手に持って家を出た。十歳になると村の風習で子供を山に送り出して山の神様に挨拶をさせるのが習わしだ。山頂に登り藁葺き屋根の村を見下ろすと、霧が濃いのかよく見えない。ゴホゴホと咳が止まらない。体が弱いのか僕は両親から疎まれていた。 「最後かぁ……」  山の神様に出会えない子供は殺される。そんな噂がある。年上の何人かが消えたことがあるが、誰も何も言わない。村人に殺されたのだろうか? 「神様いますか! 」  声を出して探す、元からどう