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創作民話 関係

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#落語

SS 損の一部、真イカ#毎週ショートショートnoteの応募用

「イカ喰いねぇ、イカ喰いねぇ 」 「イカとか気味わるいよ」  パンパンと手を叩く棒手振が長屋の住人を集めている。見れば白くみずみずしいイカが桶の中で一匹だけ売れ残ってた。長屋の女将さん、イカを見ながら顔をそむけている。見かねた長屋の八さんが、買い取り刺身にでもしようかと部屋に戻ると、助けを呼ぶ娘の声がする。 「堪忍してください、助けてください」  イカが声をあげていた。八さんがイカを皿にのせて箱膳の上に置くと、むっくりと起き上がる。 「私は竜宮城に仕える侍女、助けてくれた

SS 狸と生姜【液体_紅生姜_真っ赤な嘘】三題話枠

 狸はたまに町で人を騙す。騙すと言っても、葉っぱのお金で飲み食いするくらいだ。金が無いのだから仕方が無い。人間の方も狸に手を焼いて対策を考えた。旅の宿の主人は一計を案じる。 「旅の者だが、食事を頼む」 「それはお疲れでしょう、お通しにタコ焼きをだしましょう」 「まだ注文してないぞ」  客にいきなり紅生姜入りのタコ焼きを食わせる。出されたから客も黙って食べるが理由がわからない。 「主人、なんでタコ焼きなんだ」 「狸が辛いのが嫌いなんですよ」  山の動物は刺激の強いものは

SS 尼寺にいけ【お返し断捨離】 #毎週ショートショートnoteの応募用

「断捨離、断捨離」  長屋の外で物売りの声がするので、八さんが外に出ると勧進聖がいた。 「物乞いなら、よそでやんな」 「あなたの心の断捨離をいたします」  八さんは、断捨離がわからない。 「何か食えるものなのか?」 「いえいえ、余分なものを捨てて幸せになることです」 「余分な物は、ねえよ」  八さんは自分の狭い部屋を見せる。物なんぞ置く場所がない。 「いえいえ、心の断捨離です」 「心は捨てられないぞ」  心を捨てたら石の地蔵と同じだ。 「いえいえ、余計な心です

SS 石の塔【#暗暗裏】#青ブラ文学部

「おい誰か倒れてるぞ」 「本当だ、起こしてやれ」  男は他人の玄関先で倒れたふりをする詐欺師で、病気だと騙して飯を食って宿にタダで泊まる気だ。 「おいおい。大丈夫か?」 「いえいえ、もう動けません」  道中奉行令により旅行者が病気の場合は、地元の村が金を出して治療する義務があった。 「しかたがない、暗暗裏様に頼むか」 「うむ、そうしよう」  大八車が来ると男を乗せてガラガラと街道から村はずれまで運ばれる。そこは、石組みされた異様な塔だった。 (なんだこれは……)