SS 損の一部、真イカ#毎週ショートショートnoteの応募用
「イカ喰いねぇ、イカ喰いねぇ 」
「イカとか気味わるいよ」
パンパンと手を叩く棒手振が長屋の住人を集めている。見れば白くみずみずしいイカが桶の中で一匹だけ売れ残ってた。長屋の女将さん、イカを見ながら顔をそむけている。見かねた長屋の八さんが、買い取り刺身にでもしようかと部屋に戻ると、助けを呼ぶ娘の声がする。
「堪忍してください、助けてください」
イカが声をあげていた。八さんがイカを皿にのせて箱膳の上に置くと、むっくりと起き上がる。
「私は竜宮城に仕える侍女、助けてくれた