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2023年12月の記事一覧

SS 助手席の異世界転生 #毎週ショートショートnoteの応募用

 夜のドライブは下心を隠すのに苦労した。 「どこを走っているの」 「近くの山頂で夜景が見えるんだ」  今は車を静かな場所に移動させたいだけだ。奇妙な少女は腕を上げてヒッチハイクをしていた。耳が少しばかり尖っているのとハーフのような白い肌は作り物に感じる。 「なにかの仮装なの?」 「よく言われる……」  ぽつりとつぶやく少女の横顔を見ながら、あの時にどんな顔になるのかを想像するとハンドル操作を間違えそうになる。 「あぶないわよ……」 「ああ、ちょっと眠いかなぁ、仕事に

鬼退治 (13/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:鬼の策略で海の底に沈む幸蔵 「この島に、強い鬼がおるぞ」 「静は、おりましたか」  仙人が顎で位置を教えてくれた。島の中央に巨大な瓦屋根が見えた。鬼達がそこで暮らしている。 「私が行きます」 「お前一人じゃ難しそうだ、どれ仙丹をやろう」  白い丸薬は親指ほどの大きさだ。幸蔵はそれを無理して飲み込んだ。仙人は面白そうに笑うと「ためらわずに飲んだのはお前だけだ」  幸蔵の体から覇気があふれる。すべての攻撃を防ぐ不老不死の薬、仙人になるための薬は、

SS 肋骨貸す魔法 #毎週ショートショートnoteの応募用

「肋骨を貸す魔法よ」  薄い布団で寝てる少女は、腕をあげて俺の頭を抱きかかえた。俺は頭をあずけながら長い眠りにつく。 xxx (こんなところで何をしているんだろう)  昼下がりに夜勤から帰って来た俺はアパートの二階に座っている少女を横目で見ながら通り過ぎる。 (放置子かな……)  親に見捨てられた子供、食事を与えない場合も多い。貧困が深刻になり目立つようになる。 「ねぇ、おにいちゃん、何か食べたい」 (やっぱりか……)  俺はコンビニで買ってきたばかりの菓子パ

SS 切腹【最後の日】 #シロクマ文芸部

 最後の日にnoteでショートショートを書いてみる。noteが閉鎖されると聞いたときは、サービス終了特有の鼻がツンとするような悲しさを感じた。 「○○さんのお題で一杯、書いたなぁ」  もう何年も前に消えた人のお題で話を作っていた。誰が喜ぶでもなく意味の無い行為かもしれないが、義理で書いていたと思う。 「△△さんも来てない」  コメントをもらってコメントを返す。そんな単純な事がとても嬉しかった。いつしか縁遠くなると彼女も見かけない。 「最後はこんなもんか……」  誰

SS 逆光のみクジラ #毎週ショートショートnoteの応募用

「闇クジラ?」 「たまにでるんだ」  少年は、老人の丸太をくりぬいた小舟で漁の見習いをしている。櫓をこぎながら、老人の貴重な話を聞く。 「船幽霊が出たら、ひしゃくに酒を入れて出せばおとなしくなる」  不思議で奇怪な話は面白い。海の水底に何が居るのか誰もわからない、島くらいあるエイの話や人魚の話。 「クジラは集団で生活している」 「クジラのおっとうとおっかあもいるの?」  額の汗をぬぐいながら沖を目指す。 「子供を守ってる、だからまず子供を狙うんだ」 「……」 「そ