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創作民話 関係

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2023年9月の記事一覧

SS 洞窟オオカミ 坊ちゃん賞習作用

「マヌルさん、こんにちは」 「コトミさん、いらっしゃい」  人の少女が扉を開けて入ってくる。 「素敵なお店ですね」 「道楽ですよ」 「きれいな宝石が一杯で見ているだけで楽しい」 「そこらの洞窟で拾ってきて磨いてます」  店主はマヌル猫で、いつもぼんやりしている。 「私も洞窟に入っちゃダメですか? 」  コトミは迷い子だ。この宝石街は動物しか住んでいない。人の存在は知っていたが実物を見るのはみんな初めてで驚かれた。 「そうだね、石が欲しいならあげるよ」 「……変な事

SS 戦場の愛【愛は犬】 #シロクマ文芸部

 愛は犬へ返したい。戦いは膠着するとひたすら消耗戦になる。使えるモノはなんでも使う。 「はぁ、新しい兵器ですか……」 「かわいいですね」  新兵が犬の頭をなでる、老犬なのかおとなしい。古参兵が苦い顔をしている。 「軍曹、犬の餌どうするんですか? 」 「いらんだろ、これは兵器だ」 「犬でしょ」 「犬の兵器だ」  軍曹は黙って説明書を渡すと指令所に戻る。古参兵と新兵は、犬の説明書を読むとうんざりした表情になる。 「犬に爆弾くくりつけて敵兵を吹っ飛ばせ? 」 「自爆兵器で

屍鬼(06/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:幸蔵の姉の嫁ぎ先で尸鬼が発生していた。 「ならば、俺が退治する」  幸蔵は自分の力を試したかった、尸鬼がどのような化け物かはわからないが、自分で退治できる自信があった。  仙人と名乗る老人は、頭をふると尸鬼は目に見えないと言う。鬼に実態はなく人の体内に宿るため退治は難しい、だから薬を使う。  静は、幸蔵の背負っていた柳行李を調べたいと言う。幸蔵が持ってくると中から袋を取り出す。 「鬼退治の薬と聞きました」  見れば赤い袋に【鬼おろし】と書かれ

SS 冷宮【秋が好き】 #シロクマ文芸部

 秋が好きなのは、私が秋華だから。姉は春華、紫禁城で行方不明になり探しに来た。  宮廷に広がる池を見ながらため息が出る。姉は冷宮に、いる事が判る。ここは、冷遇された姫が来る場所だ。  池は広く蓮がおおっている、秋の空を見ながら私は心を休める。美人の姉は、親戚から金を持たされて紫禁城に入ったが王から寵愛されなかった。戻ってくるように手紙を出したが音沙汰が無い。 「秋華、もう寒いから部屋に戻ろう」 「妙光、もう少しだけ……」  彼は宦官で、男ではない。美男子なのにもったい

SS チョロいの、くさび #毎週ショートショートnoteの応募用

 マヌルはマヌル猫だ。いつもの宝石店でぼんやりしているとヨシダさんが入店する。 「チョロいの、かなずち」  宝石街は名前が適当だ。ニックネームと同じでゆるくつけている。ヨシダさんはハリネズミで長く生きているから、最近は単語だけで意思疎通する。  大工がアレソレで何が欲しいのか判るように、空気を読め。みたいなスタイルだ。 「ヨシダさん、かなずちが壊れましたか? 」  うんうんとうなずくハリネズミは小さな手を出して、早くよこせと催促する。こぶりの破砕用のハンマーを渡すと

SS 上意討ち【読む時間】 #シロクマ文芸部

 読む時間は不要だった。「上意」とだけ書かれている。左衛門はヒゲをむしりながら下人から受け取った書面を見ている。 「俺が討つのか」 「兄上」 「吉五郎、なんだ」  左衛門の弟が部屋に顔を出す。博打で金を無心にくる以外は顔を出さない。江戸時代の次男は捨て扶持で厄介者だ。長男が死なない限りは妻も持てない。 「婿入りが決まりました」 「柳沢の家か。よかったじゃないか」 「おつゆ殿は、美しく私は幸せです」  婿入りをすれば、その家で主人として扱われる。男として認められる。弟

SS 必要とされる事【アクセサリ_0%_コミュニケーション】三題話枠

「このアクセサリでいいのか? 」  無骨な男が少女を見つめる、私はうなずいた。街の夕暮れ時に屋台の店で指輪が売られていた。拒絶の指輪だ。 (こんな代物がまだあるのね……)  禁忌の時代に使われた魔物からの攻撃を防ぐ指輪。魔力を遮断するが弱点もある、加護がすべて消えてしまう。すべての魔法を100%防ぐ、ただし他の呪いや即死や石化の加護が0%になる。 「もらうわ」 「使い道はないよ……」  それなりの値段だが、アクセサリの値段としては格安だ。私はこれをもってダンジョンに入る

呪文(07/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:幸蔵は屍鬼に立ち向かう。 「阿毘羅吽欠蘇婆訶」  幸蔵が両手で印を切る。着物をはだけると背中から羽を生やして飛び上がる、幸蔵は天狗の術で空を飛べた、自在に飛び回りながら屍鬼の頭に、天狗礫をぶつける。幸蔵は手から石を生み出して投げることができた。時間をかければ両手を抱えるような大きな石を作れた。 「これはたまらん」  屍鬼が山頂に逃げる。幸蔵も飛んで追いかけるが、屍鬼の足も速く飛ぶように地面を走る、負けじと追いかけると寺が見えた。 「この女を殺