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2023年8月の記事一覧

天狗(03/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:山賊たちから娘を助けだして逃げるが、また捕まる。 「私は死んでもかまいません、この子を助けてください」  幸蔵が殺されそうになり、娘は山賊たちに懇願する。娘を見る山賊たちは、馬鹿にしたように大笑いをする。 「ははははっ お前たちは単なる犬畜生だ! 」 「やめろ! 」  娘を蹴り始める山賊たちに幸蔵は力を振り絞り立ち上がろうとした。必死の形相に、山賊たちも恐怖を感じる。山賊はすぐに殺そうと鉈を取り出す。 「ふむふむ、余興にしては、殺伐としているな」

SS 穏やかな一日【平和とは】グロ描写あり #シロクマ文芸部

 平和とは戦争が無ければ存在しない。 「平和だなぁ」 「戦争中ですよ」 「馬鹿だな、ずっと平和なら平和を実感できないだろ? 」  古参兵が屁理屈で煙にまくと、新兵が腕時計を見る。 「敵の突撃の時間です」  新兵が古参兵と一緒に塹壕の中で準備する。古参兵は、めんどくさそうに新型の水冷重機関銃を塹壕に設置した。機関銃は弾を長く発射すると銃身が熱くなり最後はつまる。水冷式はその心配が無い。 「敵兵を皆殺しだ! 」  邪悪そうな顔で古参兵が待機していると時間通りに敵の準備砲撃が

SS ダジャレバナナ #爪毛の挑戦状

 顔を白く塗った道化が恐怖の表情で固まっている、手には黄色いバナナを持って舞台に立っていた。王はつぶやく。 「ダジャレバナナだ、笑わせろ」 「このバナナが黄色いのは……、太陽が黄色いから……」  王様は黙って首を切るまねをする。舞台の上の道化は悲鳴を上げながら兵隊に連れていかれる。 「つまらん、次を呼べ」  王様は気まぐれな性格で無能だ。主君に落ち度があったとしても、交代は難しい。無能でも害にならなければ放置される。彼はひたすら笑いを求めた。面白いことが大好きな王様は、

SS 面【反るべきか、反らざるべきか。それが問題だ】#青ブラ文学部

 江戸で面職人をしていると変な依頼が来る。 「天狗の面を飾りたい」  天狗だけならいいが、鼻への注文が多い。長くしろ太くしろ細かな指定が入る。特に問題なのは反りだ。反りすぎると重さで壊れる事もある。 「反るべきか、反らざるべきか。それが問題だ」  注文から張形として利用していたと思う。芸者遊びで使うと想像した。 「御免」  その日は店先に侍が来る、商談のために部屋に通すと武家の姫様が不妊で悩んでいる、ここの面は子宝に恵まれると満面の笑みを浮かべながら、小面と天狗の面

修行(04/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:山賊を退治した天狗に大樹に連れてこられる。  井沢静は、天狗の世話をする。食事を作ったり部屋を掃除したりと忙しげだ。天狗の屋敷は巨大な大樹の枝にある。屋敷は、とても広く大きい。幸蔵の家の百倍はあると思われる。そんな場所に天狗は一人で住んでいた。 「昔は弟子もいたが、みなが地上で暮らしてる」  そんな風にさみしそうにする天狗は、元は人間で自分も天狗と暮らしているうちに神通力を得たと語る。 「おらにも神通力を教えてくんろ」  幸蔵は山賊に手も足も出

仙人(05/15) 【幸蔵の旅】

前話 次話 あらすじ:静を京へ送り届ける。 「荷物は、ありました」  山賊にさらわれて、荷物を盗まれた静は、父の仕事を受けついで自分が荷物を運びたいと幸蔵に頼む。幸蔵は寄り道は気にしていない、今は天狗の神通力が使えるので彼女をかついで走る事もできる。 「どこさ行くだ? 」  山向こうの庄屋だという。姉が居る村だった。幸蔵は静背中におぶる。手に柳行李を持って走り始めた。山道をスイスイと登ると静は楽しそうに笑う。幸蔵はその笑い声が嬉しくして自分も笑う。背中にあたたかい重さ