「著作者の権利」について、どれだけ理解していますか?|著作者人格権と著作財産権の話
ライターのみなさん、クライアントから「著作権を譲渡してください」と言われた経験はありませんか。
著作権の譲渡について、二つ返事で応じてしまう方も多いと思います。
しかし、具体的にどんな権利を譲っているのか理解できている方は、少ないのではないでしょうか。
私も「知的財産管理技能検定」の勉強をするまでは、著作権について正しく理解できていませんでした。
今回は、著作権を含む「著作者の権利」について、ライターのみなさんにシェアします。
そもそも、「著作物」とは?
「著作者」とは、著作物を創作する人のことをいいます。
では、「著作物」とは、どのようなものを指すのでしょうか。
著作権法第2条には、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。
小説や記事、絵画、音楽、コンピュータープログラムなどが対象になり得ます。
ライターが頭をひねって書いた記事も、立派な著作物です。
著作者の権利は「著作者人格権」と「著作財産権」の2つ
実は、著作者の権利は、「著作者人格権」と「著作財産権」の2つに分類されます。
みなさんが日頃「著作権」と呼んでいるものは、「著作財産権」を指している場合が多いようです。
「著作財産権」は譲渡できますが、「著作者人格権」は、譲渡や相続ができません(著作権法59条)。
クライアントから「著作権を譲渡してください」と言われた場合は、「著作財産権」を譲渡することになります。
それでは、それぞれの権利について詳しくみてきましょう。
著作者人格権は「パーソナリティー」を保護
「著作者人格権」は、著作者の人格的利益を保護する権利のことです。
「人格的利益」とは、著作物に対する思い入れのようなものだと思っていただければ、わかりやすいでしょうか。
先ほども紹介したように、著作者人格権は、譲渡や相続ができない「一身専属性」を有しています。
著作者人格権には、次の3つの権利があります。
・公表権(著作権法第18条)
未公表である著作物を、いつ・どのような方法で公表するのかを決められる権利
・氏名表示権(著作権法第19条)
著作者名を表示するかどうか、表示するなら実名にするかペンネームにするかを決められる権利
・同一性保持権(著作権法第20条)
著作物のタイトルや内容を著作者の意に反して、変更や切除、改変などを受けない権利(誤字・脱字の修正などは許容)
この3つは、著作財産権を譲渡したあとでも、著作者に認められます。
著作財産権は「財産」を保護
一方、「著作財産権」は、著作者の財産を保護する権利のことです。
他人に譲渡できます。
著作財産権にも種類があり、ライターとの関わりが深いであろうものは、次の通りです。
・複製権(著作権法第21条)
著作物を複製(コピー)する権利
・公衆送信権(著作権法第23条)
放送やインターネットで著作物を伝達する権利
・譲渡権(著作権法第26条)
原著作物または複製物を譲渡できる権利
・翻訳権、翻案権(著作権法第27条)
著作物を翻訳、脚色、その他翻案する権利
※このほかにも、上演権や口述権、展示権、貸与権などがあります。
著作財産権をすべて譲渡してしまうと、著作者であっても、その著作物を自由に利用できません。
「著作財産権は譲渡したけど、自信作だからブログにアップしちゃえ!」は、絶対にNG。
クライアントの「複製権」「公衆送信権」を侵害する恐れがあります。
「知らなかった」では済まされない事態になりかねませんので、注意しておきましょう。
クラウドソーシンングを利用すると「著作者の権利」はどうなる?
ライターのなかには、クラウドソーシングを利用して仕事を受注しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大手クラウドソーシング「クラウドワークス」の利用規約には、次のように記載されています。
第5節 会員の義務及び責任
第17条 本取引の成果物等に関する知的財産権及びその利用
1. ワーカーがクライアントに対して納品した成果物に関する著作権等の知的財産権(著作権法第27条及び第28条の権利を含みます。)は、本取引によって譲渡がなされない限り、作成した会員自身に帰属するものとします。なお、本取引の中において別途取決めがある場合は、同取決めが優先されるものとします。
2. 第三者の保有する知的財産権を成果物に利用する場合、ワーカーは当該第三者の事前の許可を得るものとし、クライアントに対して第三者の権利侵害をしていないことを保証するものとします。ワーカーが当該保証に反していることが明らかになった場合、ワーカーはクライアントに対して損害賠償その他の責任を負うものとし、会員間で直接協議及び解決をするものとします。
3. ワーカーは、本取引によって知的財産権をクライアントに譲渡した成果物につき、クライアント又はクライアントの取引先に対し、著作者人格権を行使しないものとします。
引用:クラウドワークス利用規約
要約すると、
・著作権は原則としてワーカーにあるが、当事者間で話し合って譲渡することも可能
・第三者の著作物を使って創作する場合、当該第三者の許可が事前に必要(ワーカーの責任)
・クライアントに著作財産権を譲渡した後は、著作者人格権を行使できない
ということです。
大切なのは、3つ目の「著作者人格権行使の制限」。
先ほど、
著作者人格権は、譲渡や相続ができない「一身専属性」を有しています。
とご紹介しましたが、クラウドワークス上で著作財産権を譲渡した場合、
著作者人格権の
・著作者名は表示されるのか
・どのような修正が加わったのか
・いつ/どのように公開されるのか
について決める・知る権利はワーカー側にあるという形を取るものの、
使用を禁じられるということです。
したがって、記事に名前が掲載されない、どのような修正が加わったのか・どのメディアで公開されるのか教えてもらえない可能性があります。
「利用規約なんて、よく読んでないよ!」という方は、この機会にじっくりと確認してみてください。
クラウドワークスのよくある質問にも記載されています。
https://crowdworks.secure.force.com/faq/articles/FAQ/10355?l=ja&url=10355
著作権についてもっと知るには?
今回は、著作者人格権と著作財産権の大まかな内容についてご紹介しました。
みなさんは、どれだけ著作権について知っていましたか?
【著作者の権利について】
◇著作者人格権
譲渡できない。
公表権と氏名表示権、同一性保持権の3つ。
◇著作財産権
一部または全部を譲渡できる。
複製権や公衆送信権、譲渡権 など。
ということを覚えておきましょう。
著作権制度についてもっと知りたいのなら、文化庁の「著作権制度に関する情報」に目を通してみてください。
著作権法の内容がわかりやすくまとめてあります。
著作権は、知的財産権の1つです。
著作権法だけでなく、コンテンツ管理に関する法律全般について学びたいという方には、「知的財産管理技能検定」をおすすめします。
著作権や特許法をはじめ、意匠法や商標法、独占禁止法など、知っておいて損はない法律の知識が身につきます。
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合格すると「知的財産管理技能士」を名乗れます。
試験は3級から1級まで。
法律知識に自信のないライターのみなさん。
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(「知的財産管理技能検定」は、キタキュースタイルのナリシゲさんがおすすめしてくださいました。ありがとうございました。)
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