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6月24日(木)小山田壮平弾き語りツアー2021@なんばHatch ~この時代に「旅」を歌う意義~

こんにちは。
今回は先日、なんばHatchで開催された小山田壮平の弾き語りライブについて話したい。

元andymoriのフロントマン、小山田壮平は僕の人生に最も大きな影響を与えたアーティストのひとりである。その思い、これまでの思い出を語りだすと止まらないので、またの機会にしたい。

・andymoriのラストツアー

さて、先日6/24に参加した弾き語りライブだが、彼の生演奏を聴くのは、2014年7月の大阪城野外音楽堂、andymoriとしてのラストツアー以来だった。
当時、彼の転落事故以後、そもそも解散ライブをおこなえるほど回復できるのか、いつ復帰できるのかといった不安が絶えなかった。
なので、小山田壮平の回復とライブ実施のインフォメーション、しかも大阪に来るという報せには歓喜した。
ついてきてくれる友人もおらず、ひとりで最前列から見たandymoriの大阪での最後のライブ、壮平は少し痩せて見え、喉には痛々しい手術の跡があった。が、今まで通り爆音の演奏に負けずに血管を浮かび上がらせて叫び、ステージを跳ね回る彼の姿は変わらなかった。

その姿で僕の「小山田像」は止まっていた。もちろん、音源はソロ、ALでの活動ともにずっと追いかけていたし、映像で彼の姿を見ることもあった。

だが、青臭い10代の悶々とした気持ちを投影させたがら聞いていたandymori。その最後の雄姿という強烈なイメージが僕のなかでずっととどまり続けていた。

・7年という月日

そして迎えた開演の時間。壮平はTシャツにGパンといういつもの姿、猫背気味に片手をあげながら僕たちの前に現れた。

印象:「年、取ったな。7年だもんな。」

中学生だった僕は社会人になった。
ライブ中のMCで、先日37歳なったと語った壮平の顔には少し皺が深くなった気がした。

でも彼の歌声で、僕はすぐに10代のあの頃に引き戻された。
ギター一本の弾き語りでありながら、andymori時代の楽曲もたくさん演奏され、あの頃と変わらない感情的な絶叫もあり、かつ、時間を経たからこその表現力も感じられる、満足したライブだった。

・旅を歌う

今回の弾き語りツアーは「小山田壮平バンドツアー2021 THE TRAVELING LIFE」に引き続く形で組まれた。
昨年の8月リリースになった、ソロファーストアルバム「THE TRAVELING LIFE」の発売を記念してのバンドツアーだったのだが、昨今の状況を鑑みて今春の開催となったのだろう。

このアルバムのタイトルもそうだが、壮平の楽曲には旅することや旅先で出会ったひとについて歌ったものが非常に多い。旅することと楽曲制作は、かなり密接に関わっているようで、このコロナ禍では制作も苦労したのだろうと思う。このアルバムにも過去訪れた旅先でのエピソードをもとにした曲があるとMCで語った。

「でも、もうそろそろ旅にいけそうな気がしない?」

壮平は笑いながら会場に尋ねた。
会場のリアクションは失笑とも言える反応だった。このライブの一週間前まで緊急事態宣言が発令されていたのだ。ちょっと楽観的過ぎる、といった笑いだったのだと思う。

しかし、アーティストのツアーというものも、歌を歌いながら全国各地を廻る「旅」だ。彼にとっては、ギターを担いでその地のひとと一緒に歌う、その場所がゲストハウスでもライブハウスでも同じ「旅」なんだろうなと僕は思った。
実際こうして、ツアーを周れるようになったこと、僕たちにとってはこうしてライブに行けるようになったこと。コロナ禍になって最も厳しくとがめられ続けてきた、この「旅行」と「ライブ」が現にできるようになったのだ。確かに「もうそろそろ」と希望を持ってもいいのかな、と僕は共感できた。
そして、彼のライブに参加することは、彼の旅に自分も参加しているような気分になれた。

・コロナ禍に染みる歌

公演の一番最後、アンコールを締めくくる曲に壮平が選んだのは「シンガー」だった。

「本当だったらみんなでシンガロングしたいんだけど。」

壮平はそう語った。
9年前の歌だが、いまの僕たちのことを歌っているようだった。

「なんだか疲れてしまったね まいってしまったね
心の声は届かない どんなに近づいても」

こんな世の中に本当に疲れてしまった。「心の声は届かない どんなに近づいても」ならば、身体の距離を取らないといけないいまはなおさら心では分かり合えないのかな、なんて考えたりもした。

僕たちは黙ってこの曲に身体を揺らした。

「モノクロの世界の中でフルカラーの君を
僕は見つけたよ 君はシンガーだ」

このつまらない、色味のない世界を色づけてくれるもの、僕にとってそれは音楽なんだなと改めて思った。目の前にいるこの「シンガー」が歌う曲でモノクロの10代を救ってもらい、またいまもこうして元気をもらっている。

実際に旅に出かけなくても、音楽は心を「いまここ」ではないどこかへ連れて行ってくれる。現実から目を背けることは、いまこの辛い現実に向き合うための助走だと思う。
いまはこの「シンガー」を静かに聴く。でも、この曲を思い切りシンガロングできる日が来ると信じ、心待ちにしたい。

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