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『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』にみる、加速進化のある世界

 鬼才デヴィッド・クローネンバーグ × ヴィゴ・モーテンセン氏が4度目のタッグを組んだSFホラー。 

急速な進化によって人類から痛みの感覚が消えた近未来を舞台に、自らの体内から新たな臓器を取り出すパフォーマンスを行うテンサ―(モーテンセン)とパートナーのカプリース(レア・セドゥ)を主人公に贈る異色作。

生体と見紛うグロテスクな寝台に横たわり、臓器の芽を育てるテンサー&見守るカプリース。
痛みの消えた世界で男女の関係は近未来的となり、まぐわいもまた過激になり、肉体を傷つけあう行為が巷に溢れている。
進化の暴走を警戒する政府は二人への監視を強め“臓器登録所”から調査員ティムリン(クリステン・スチュワート)を派遣するなか、人々の進化は加速度的に進んでゆくのだった。

鬼才の息子ブランドン・クローネンバーグ氏が監督した『ポゼッサー』の後味悪さとは違って、気色悪く狂ってるのに、ある種キッチュな造形物たちが愛おしくすらある。
それは『ザ・フライ』『ビデオドローム』『裸のランチ』に狂喜し、最近めっきり鳴りを潜めていた観あるヘンテコ異形の者たちへ対する愛着のようである。

全編滞りなく色っぽい、そして生々しい。
臓器登録所の女性職員が悶える好奇に抗えない姿が愛らしい。
文句なしに妖しいレア・セドゥをヴィゴ・モーテンセンにぶつける妙。
アラゴルン役から幾歳月、還暦を迎えてなおこんなにもセクシーな俳優はなかなかいないとおもう。 

(カナダ=ギリシャ合作/108min)

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