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29歳のミニスカート

大学生と社会人の壁

今でこそ個人事業主として働いているが、過去に2年だけ会社勤めをしたことがある。2014年の新卒採用で入社した会社。私が24歳の頃だった。

その会社は結構お硬いイメージがつきまとう業界だった。実際にはいろいろと問題のある会社でもあったが、一応表向きには「社会の規範となることを目指す」ようなところはあったと思う。実際には社会の規範となるどころか問題だらけの会社ではあったが。

そういう会社に大学を卒業した後すぐに入った。会社の問題には本当に腹を立てたが、会社が表向きに持つ「社会の規範となる」イメージに対して嫌悪感はなかった。その点に関しては納得もしていた。

女子大生だった頃の私は、ミニスカートやショートパンツなど、脚を出す格好をよくしていた。

スタイルには自信があった。脚の長さにも太さにも自信があった。だからそういう脚を出したファッションをするのが好きだった。

しかしもちろん会社ではそういう格好をするわけにはいかない。お硬いイメージのある会社ではいつも膝より下の丈のスカートをはいていた。

「もういい年齢なんだから。脚を出したファッションはしてはいけない」

そういう生活を2年続けているうちに、私はそう思うようになった。

私はモデルだ

イメージそのものに対しては納得もしていたものの、会社からの理不尽な扱いに腹を立てた私は、結局2年でその会社を辞めてしまう。表向きには「社会の規範」という面を見せているが、その実情は規範になるどころか社会の規範を崩壊させているものだった。

辞めた後私は、作家・ライターなどの文筆業と、モデルの芸能活動をするようになる。ただ文章を書く仕事をするのではなく、ただ容姿がいいだけの女になるつもりもなかった。「文章が書ける美女」になろうと思ってのことだった。

モデルの他にもミスコンにも出場した。だから私には容姿に対する自信がそれなりにあった。

当然スタイルも悪くない。少し痩せ過ぎであることが悩みどころではあるが、日頃から筋トレをして引き締まった健康的な体作りをしてきたのも事実だ。

特に下半身の筋トレは重視してやってきたから、脚もきれいであるはずだった。ついでに言うとウォーキングだって得意だ。

それでも私はミニスカやショートパンツなどのファッションはしなくなっていた。

「もういい年齢なんだから。脚を出したファッションはしてはいけない」

スタイルに自信がありながらも、そう言っていつも脚を隠すファッションをしていた。

久しぶりのミニスカート

最近交流会などに頻繁に参加するようになった。もっとたくさんの人と会って、刺激を得ようと思ったからだ。

そこで自分のファッションを見直した。

クローゼットには膝丈のスカートか、パンツしかない。スキニーパンツを履けばそれなりに自分の脚を見せられるが、それはミニスカートやショートパンツとはまた意味が違う見せ方になる。

筋トレはほぼ毎日やっている。下半身は特に重視している部位だ。

「もういい年齢なんだから」

しっかりと筋トレをし、体作りを怠らず、自分のスタイルを維持する努力をし、その努力に見合った自信を持ちながら、「29歳」という数字を意識して脚を出さない。その発想がとても卑屈なもののように感じた。

卑屈な自分を打ち破るために、私は勇気を出してミニスカートを2着購入してみた。それを着て、交流会に参加してみた。それを着て、外出をしてみた。

案外普通だった。別に誰も、いちいち私に注目することはない。

だいたい、「世間は私のことを変だと思っている」と考える方が自意識過剰なのだ。残念ながら世間は思っているほど私に注目もしていない。だから29歳でありながらミニスカートをはいているからと言ってとがめもしない。

人と会う時もいたって自然だった。自己紹介ですでに自分がモデルをやっていることは告げている。肩書きだけでなく、私も日々努力をしている。だから誰も私のミニスカート姿に対して「29歳なのに」などと言わなかった。

「もういい年齢なんだから」

なんと卑屈な言葉だろうと思う。年齢を理由に自分の好きな格好を、自分自身が一番自分のことを好きになれる格好をしないなんて。

世間は思っているほど私を見ていない。ならば私は私が一番好きな格好をする。私が一番私のことを好きになれる格好をする。






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