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WINTER CUP 2023 鹿児島県女子代表鹿児島高校①

高校バスケ最高峰の舞台、ウインターカップ2023。鹿児島高校は11月に開催された鹿児島県予選で、持ち味を存分に発揮し2連覇を達成。本戦への切符を勝ち取った。頂点に向かって着実に歩みを進め、この2シーズン、鹿児島の高校女子バスケをリードしてきた鹿児島高校。庵下晃代ヘッドコーチのキャリアを振り返りながら、ウインターカップ本戦に臨む意気込みを聞いた。

庵下HC(右)と3年生の学生コーチ福迫萌衣(左)

高校進学を機に指導者の道へ

庵下晃代ヘッドコーチは鹿児島市生まれ。小学校5年生でバスケを始める。小・中学校時代はバスケの他にサッカー、テニス、水泳にも取り組み、いわゆる”スポーツ万能”な生徒だったという。高校でもバスケをしたいと思い、ひとつ上の先輩がいた鹿児島高校を選んだ。両親は進路に難色を示した時もあったが、英数科に入り、勉強と部活の両立を目指した。現役時代はポイントガード。「両立はなかなか難しかった」と苦笑いするが、高校時代の3年間で「先生方の指導を受けて教員に、指導者になりたい」という意志を固めた。東京女子体育大学を卒業後、茨城県大子町の中学校にて臨時採用の教師として働き始める。2年目に教員採用試験に合格し、赴任した全校生徒32人の小規模校では1年間、剣道部の顧問も務めた。「当時からバスケットの指導もしていましたが、その時は生徒と一緒になって竹刀を振りました(笑)」。周囲にも恵まれ、中学校教師としての年月を重ねていった。

恩師たちのバトンを受け継ぐ

教師生活10年の節目で、鹿児島高校の恩師より帰鹿する意思があるかどうか、打診を受けた庵下ヘッドコーチ。タイミングのめぐり合わせにも運命を感じ、母校で働くことを決断した。2019年4月より鹿児島高校に着任。女子バスケットボール部のアシスタントコーチから始め、ウインターカップ県予選後、新チームスタートとともにヘッドコーチを務めることになった。当時は鹿児島女子、鹿児島純心女子、れいめい、大島、鹿屋女子らが有力チームとして大会をリードしており、鹿児島高校は【以前は鹿児島と鹿児島純心女子が強い時期が続いたが…】と評価されるような状況だった。(引用:SoftBank ウインターカップ2020/各都道府県紹介コラム/鹿児島県女子)

翌、2020年はコロナ禍によりインターハイが中止となった。その年はウインターカップ県予選まで、3年生の半分が残ったという。「鹿児島女子とベスト4をかけて対戦。敗れはしましたが、印象に残るゲームでした」
2021年4月、現在の3年生が入学する。庵下HCもリクルートに関わり、山下、西田、山本、鮫島らが入部。ここに山下、西田と緑丘中のチームメイトだった伊地知も加わる。「伊地知は…たまたま来てくれた(笑)。シャイですが、内に秘めるものは熱いですよ」。2年生に鎌田まりあ(現・福岡大学)がいて、山下、伊地知は1年時からロスターで出場していた。その年のウインターカップ県予選。鹿屋女子と対戦して勝利する。「ウインター予選でベスト4はひさしぶりだった」。手ごたえを掴み始めていた。2022年は鹿児島市内新人で優勝、県新人戦でベスト4。南九州四県対抗予選では鳳凰に敗れてベスト8と足踏みはしたが、夏のインターハイ予選で優勝。ウインターカップも制し、2冠達成。3年生鎌田と2年生4人で組んだスターティング5は、今も鮮烈な印象を残す。全国での一勝は後輩に託されたが、チームが貴重な経験を積んだことは間違いない。

インターハイ予選の敗北を糧に

2023年春。前年からの主力選手が多く残る鹿児島は、シーズン序盤からチャンピオンチームとして、優位に戦ってきた。なかでも春の九州大会では地元県勢として、唯一ベスト4に残り、準決勝戦では全国ベスト4の東海大福岡を相手にひるむことなく、堂々たるプレーを見せた。全国での勝利を照準とするチームへ。その意志を感じさせる試合だった。

ところが新年度が始まると、チームの歯車は少しずつ狂っていく。南九州四県対抗予選決勝では、れいめいに迫られ、OTの末に辛くも勝利。続くインターハイ予選。はた目にもチームの調子は上がっていないように見えた。「チームとして変わりきれなかった。これじゃ勝てないよね、という練習、バスケットだった」と、庵下HCもキャプテン山下も率直に認めている。
インターハイの負けはこたえた。そこからどうチームを立て直したのか。「3年生は力も経験もある。どう自信を持って、コートで表現できるようにすればよいか。これで最後、今までのものを全部出すという思い。気持ちの面、それだけでした」。吹っ切れた。もちろん、戦術面での準備も怠らなかった。「先のインターハイ予選では3ポイントシュートを打たれ、ペイントアタックでもやられた。もう一度ディフェンスに集中しよう」

(写真左から)山本沙奈、山下陽色、松原百合菜、伊地知優果、西田詠琶

下級生の成長もあった。「2年生の松原は、春の九州大会では何もできなかったと悔やんでいた。IH予選でもマッチアップの相手に負けていました。ウインター予選では絶対に負けたくない。日ごろの練習から、その気持ちが見えていましたね」

臨んだ決勝、相手は再びれいめい。この2年、両校はよきライバルとして渡り合ってきた。結果は75‐97で勝利。序盤はれいめいがスタートダッシュに成功し10点リードで終えたが、2Qで逆転すると、後半は終始優位に試合を進めた。伊地知、山本が中、外とバランスよくスコアを稼ぎ、5人がディフェンスで走り負けない。澁谷や牧之瀬ら、交代選手も自分の仕事を遂行した。キャプテン山下は終盤の勝負どころで確実に得点し、試合を通してリバウンドに跳び続けた西田の顎には、青あざが光っていた。

庵下HCにとっても会心のゲームだった。「出だしはIH予選決勝のフラッシュバックがあったかもしれません。ただ自分たちのミスだったので、すぐ修正できました」。勝利は、嬉しかった。チームとして目指していたバスケットをみんなで表現できた、とほほ笑む。「恩師の先生方にも、初めて褒めて頂けました(笑)。それまでは、勝っても『まだまだ』という感じでしたが、あのゲームに関しては文句なし、と」。庵下HCが師と仰ぐ碇山明美先生、中村俊次先生から受け継いだバトンに、深く刻まれる勝利となった。

ウインターカップ本戦に向けて「勝つとしたらこれしかない」

12月23日に迎える初戦。相手は福島県代表・福島東稜高校に決まった。「高さのある相手に、まずディフェンス。素早い切り替えについていく。留学生に対してはチームで守る。ボールマンへのプレッシャー、ハードワークして頑張りたいですね」。全国大会の場で、地方大会とは戦い方を変えるチームもあるが、鹿児島はそのままの、自分たちのバスケで勝負する。「今やっていることを、さらに上乗せできるように。みんなが外から打つ。相手に出てこられたら中に入る。うちのチームが勝つとしたらこれしかない、というバスケットをなんとか確立させて、チャレンジしたいですね」と語る庵下HC。県勢女子、全国大会での悲願の一勝を賭けて。チーム一丸、本戦へと挑む。

伊地知&山下コンビ。ガッツです。

2023年12月
取材・文/泊 亜希子



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