見出し画像

オリックスバファローズが強くなった理由

 オリックスバファローズは2004年のシーズン終了後にオリックスブルーウェーブが大阪近鉄バファローズを吸収合併(大阪近鉄バファローズの事実上の消滅)したことにより誕生しました。オリックスバファローズとして初めてのリーグ優勝は2021年、2022年にはリーグ2連覇と日本一を達成しました。オリックスブルーウェーブは1996年に日本一の栄冠を手にしたことがありますが、大阪近鉄バファローズはリーグ優勝こそ4度ありますが、日本一になることは1度もありませんでした。そのため、2022年はバファローズが初めての日本一に輝いた年ということになります。大阪に本拠地を置く球団が日本一になったのも1964年の南海ホークスまで遡ります。

 オリックスバファローズは長らく低迷の時代が続き、チームが誕生してから2021年にリーグ優勝を果たすまでの16年間でAクラスになれたのは2008年と2014年の2度、優勝争いに加わることができたのは2014年の1度だけでした。そのオリックスバファローズが2021年に前年の最下位から見事にリーグ優勝を達成、2022年にリーグ連覇と日本一を達成したことで2021年が確変ではなく、強豪チームになったことが証明されました。オリックスバファローズが強豪チームに変貌することができた要因を今回は考えていきます。

①練習施設・選手寮・ファーム(2軍)本拠地を大阪に移転

 オリックスバファローズは2004年のシーズンオフに誕生後、3年間は大阪近鉄バファローズが本拠地を置いていた大阪とオリックスブルーウェーブが本拠地を置いていた神戸のファンに配慮して、大阪と神戸の2つの地域を本拠地とするダブルフランチャイズというかたちを取っていました。その後、徐々に大阪での主催試合を増やして、神戸での試合を減らしていったのですが、練習施設・選手寮・ファームの本拠地は神戸にあるブルーウェーブ時代のものを使用していました。

 しかし、2017年の3月にオリックスバファローズは練習施設・選手寮・ファーム本拠地を大阪の舞洲へ移転しました。ブルーウェーブ時代からのファンや神戸の周辺エリアに住むファンにとってはオリックスバファローズが神戸から離れていくのは複雑な出来事だったと思います。オリックスブルーウェーブがかつて本拠地にしていたほっともっとフィールド神戸で2023年にオリックスバファローズが開催を予定しているシーズン公式戦は僅か8試合となり、あの素晴らしい球場で試合を観られる機会が少なくなったのは私にとっても寂しい出来事です。しかし、オリックスバファローズが強くなった最も大きな要因は練習施設・選手寮・ファーム本拠地を舞洲へ移転したことだと私は思っています。

 2016年シーズンまでオリックスバファローズの選手は京セラドームでの試合後、練習に取り組むことが難しい状況にありました。寮に住む1軍の選手は大阪での試合後、神戸までの約50キロの道のりを高速道路を使用して、仮に渋滞がないとしても、1時間ほどの時間を掛けて帰らなければなりません。京セラドームから神戸の選手寮へ高速道路で移動する際は阪神高速3号神戸線を使用すると思いますが、このルートの神戸周辺地域は渋滞が発生しやすいため、選手は移動だけでかなりの負担を強いられていたことが予想されます。この負担が舞洲への移転でなくなったのです。舞洲から京セラドームまでの距離は約10キロ、車での移動時間は約20分です。高速道路を使用すれば、15分ほどで到着できます。そのため、寮に住む1軍の選手が試合後に練習に取り組めるのはもちろん、寮に住まない選手も試合後に舞洲で練習をすることが現実的に可能になりました。大阪の近隣に住んでいない方は舞洲のイメージが湧かないかもしれませんが、舞洲は住所こそ大阪市内ですが、いろいろな意味で陸の孤島です。実際、舞洲は埋立地ですし、選手が夜に抜け出そうと思えば、車以外に選択肢がありません。夜中に寮の周辺を車1台どころか、人が1人通るだけでめちゃくちゃ目立つため、選手が夜に無断で抜け出すのは非常に困難です(笑)若手選手が野球に打ち込むには最高の環境だと思います。

 また、1軍と2軍の試合が大阪で開催される日は若手選手が昼は2軍の試合、夜は1軍の試合に出場することが容易になったため、1軍の若手控え選手の試合感覚が鈍るのを防げるようになりました。ちなみに2016年のドラフトで入団した山岡泰輔投手・山本由伸投手・山﨑颯一郎投手は2017年の1月の合同自主トレの間は神戸の寮で生活を送り、キャンプ終了後の3月から舞洲の選手寮で生活を送ることになった最初のメンバーです。2016年以降のドラフトでオリックスバファローズに入団した選手としては、先ほど取り上げた3名以外ですと、2017年1位指名の田嶋大樹投手、3位指名の福田周平選手、4位指名の本田仁海投手、2018年2位指名の頓宮裕真選手、7位指名の中川圭太選手、2019年1位指名の宮城大弥投手、2位指名の紅林弘太郎選手、2020年育成3位指名の宇田川優希投手、28歳での入団のため、寮には住まなかったと思いますが、2020年6位指名の阿部翔太投手などがいます。2016年以降のドラフトで入団した多くの選手が優勝に大きく貢献したことが分かります。

②オリックスグループによる大阪ドーム(京セラドーム大阪)買収で実現できたバファローズへの投資

 大阪ドームは1997年3月に大阪市と複数の企業が中心となって経営する第三セクター・株式会社大阪シティドームとして開場しました。しかし、大阪近鉄バファローズの観客動員数の低迷、コンサートなどイベントの際に観客がジャンプをすると近隣で地震のような揺れが発生することによって使用を控えるケースが出たこと(その後、観客のジャンプによって盛り上がる行為の禁止が徹底されているため、安定してコンサートが実施されるようになりました)、大阪市の財政の赤字体質が在阪メディアで取り上げられる機会が増えたことで、利益を出せない大阪ドームに税金が投入されることへの批判が高まったことなどにより、運営の変革が迫られる状況になりました。最終的に2006年9月、現在のオリックス不動産(当時のオリックス・リアルエステート)が中心となり、組織を変更した新しい株式会社大阪シティドームが発足されました。これにより、大阪ドームはほぼオリックスグループの持ち物となったため、大阪近鉄バファローズが事実上消滅する大きな要因になった、球場の使用料が球団経営を圧迫することはなくなったと思われます。現在はオリックスバファローズが使用料を払っているとしても、オリックスグループの中でお金が動いているだけだと私は考えています。

 北海道日本ハムファイターズが札幌ドームの使用料の負担を解消させるために、エスコンフィールドHOKKAIDOの開場に踏み切ったことを考えると、球団や球団を運営する企業が球場を所有したり、球場の多くの権利を取得することは、健全な球団経営実現のための必須事項だということが分かります。それが球場の改修や選手の補強にも大きな影響を及ぼします。あまり取り上げられませんが、オリックスグループが大阪ドームの経営や運営に大きく関わることになって以降、フィールドシートの設置、フェンスを安全な素材に変更、スコアボードのリニューアルや芝の変更も頻繁に実施しており、環境を整えていきました。

 オリックスバファローズは長らく低迷の時代を過ごしていましたが、オリックスグループがチームへの投資を怠ることはありませんでした。①で取り上げた練習施設・選手寮・ファーム本拠地の舞洲への移転もそうですが、2004年シーズンオフのチーム誕生から2021年のリーグ優勝までにFAで5名の選手、トレードで糸井嘉男選手、MLBのスター選手だったアダム・ジョーンズ選手など多くの選手を獲得して、選手の補強にもしっかり取り組んでいました。

◯最後に

 「オリックスバファローズはお金を掛けるが強くなれない」「良い選手はいるのにAクラスにもなれない」と揶揄する人が当時はいましたし、私もそのように思ったことは正直あります。しかし、球団への投資を地道に続けてきた結果が2021年と2022年の結果に繋がったのです。2022年までオリックスバファローズのオーナーを務めた宮内義彦さんが日本一の際に選手に促され、胴上げをされる場面がありましたが、この方がチームを見捨てなかったことがオリックスバファローズが強くなった要因だと思います。

 今のオリックスバファローズはライオンズファンの私から見ても、とても魅力のあるチームです。かっこよくて、ファンへ優しく対応してくれる選手の存在、球団として積極的なイベント開催、応援しがいのあるチームへと生まれ変わりました。2023年は京セラドームだけではなく、ほっともっとフィールド神戸でもライオンズ戦が開催されるため、今から本当に楽しみです。


◯追記
 2023年、オリックスバファローズ、パ・リーグ3連覇おめでとうございます。


◯出典
・オリックスバファローズ 2023年4月19日
https://www.buffaloes.co.jp/

・Number Web 「鈴木一朗」も過ごした寮の移転。オリックスと神戸、1・17からの未来。  発信日 2017年1月20日 確認 2023年4月19日
https://number.bunshun.jp/articles/-/827294

・京セラドーム大阪 2023年4月19日
https://www.kyoceradome-osaka.jp/


 読んでいただき、ありがとうございます。多くの方の心に響く作品や記事が書けるよう、今後も努力を重ねていきます。「作品や記事がおもしろかった」と思っていただいた方、興味を持ってくださった方は支援をしていただけると、とても嬉しいです。

ここから先は

77字

¥ 300

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が参加している募集

#野球が好き

11,173件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?