『ドラゴンボール』のクリリンと18号が結婚するまで

※『ドラゴンボール 全42巻』のネタバレが含まれますので、ご注意ください。

　2024年に作品の連載開始から40周年を迎えた不朽の名作『ドラゴンボール』。悟空や仲間達が強くなるために敵とバトルを繰り広げるという分かりやすいストーリーから、今でも世界中で多くの人に愛されています。戦いを通じて悟空達が成長をすることがストーリーの軸になっているため、恋愛要素は多くありませんが、それでも作中では何組かのカップルが生まれています。その中でも多くのファンに愛されているのがクリリンと18号の2人です。『ドラゴンボール』では悟空とチチ、ベジータとブルマ、悟飯とビーデルも結婚をしていますが、クリリンと18号のカップルは圧倒的な人気があります。なぜ、この2人は多くのファンに愛されているのでしょうか。

◯クリリンが18号を好きになったきっかけ

　まず、クリリンと18号が他のカップルと決定的に違うのは、男性側からアプローチをして、それが実ったことです。悟空もベジータも悟飯も相手からのアプローチをきっかけにして、結婚へと至りましたが、クリリンと18号は先にクリリンのほうが18号のことを好きになりました。

　元々は敵同士だったクリリンと18号、仲間がやられて、18号を含む3人の人造人間のあまりの強さに足がすくんでしまったクリリンに対して、18号はキスをして、クリリンの前から立ち去りました。このキスをきっかけにクリリンは18号を好きになったわけです。この時、18号はクリリンのことが好きだったわけではなかったと思いますが、リップサービスとはいえクリリンの頬にキスをしたということは、18号にとってもクリリンはバッチリ合格ラインに達していたのだと思います。

◯18号がクリリンの想いに気付いた場面

　18号への想いを募らせていたクリリンですが、セルとの戦いの中、クリリンは自身の手で18号の息の根を止めなければいけない場面に直面します。ブルマが作ったコントローラーを使って、人造人間を停止させる役割をクリリンが担うことになったのです。人造人間の１０メートル以内に近づかなければ効果がないため、18号のすぐ側まで近づき、後はコントローラーを起動させれば、18号と16号を停止させる状況を作りました。最後の最後まで迷っていたクリリンですが、最終的に18号を停止させることはしませんでした。18号を逃がしたところで18号がセルに吸収されれば、セルの強さが手をつけられなくなるため、18号を停止させる以外の選択肢はなかったはずですが、それでも、クリリンは18号に

「うまく逃げるんだ！！　ぜったいセルに吸収されないでくれ　たのむ！！」

そう伝えました。

　18号は最初、自分を倒す絶好のチャンスを放棄したクリリンに疑問を感じていましたが、アニメ版ではクリリンの様子を見て、ここで18号もクリリンの気持ちに気付く様子が描かれています。

　その後、クリリンの想いも虚しく、18号はセルに吸収されますが、悟飯が超サイヤ人に覚醒したことで形勢が逆転、悟飯の蹴りを顔面に受けたセルは吸収した18号を吐き出しました。悟空の捨て身の瞬間移動でセルを1度は倒した後、アニメ版では当然のように18号を助けるクリリンが描かれており、ベジータから「まだ生きているなら、早く殺せ」と言われても、「この18号はそれほど悪いやつじゃない」と拒否。しかし、死んだと思ったセルが復活して、さらに形勢逆転、ピンチに陥るZ戦士達ですが、セルにやられたトランクスと18号を1度避難させ、最終的に悟飯がセルを倒し、セルとの戦いに幕を閉じました。

　その後、疲労困憊の悟飯とセルにやられたトランクスを神様の宮殿まで連れて行くZ戦士達、この時、当然のように18号も一緒に連れていくクリリン、アニメ版ではその時のやりとりが描かれていますが、漫画では本当にしれっと連れて行っています。なんなら、悟飯がセルを倒す際、18号が巻き添えにならないよう、クリリンは18号を抱えて空に飛んでいます。

　神様の宮殿でデンデに回復してもらった18号。クリリンがモゴモゴしていると、悟飯が「クリリンさん　18号をスキなんだ！！」と言ったことでクリリンが18号のことを好きなことがZ戦士の中でもはっきり認識されます。しかし、18号は「手でもにぎってほしいのか？チビのおっさん」とクリリンを罵り、宮殿から立ち去ります。クリリンの想いが実ることはありませんでした・・・。そうなるはずでしたが、ここからクリリンのウルトラZの優しさが炸裂します。

　セルにやられた人達を生き返らせることを神龍に願うZ戦士、ここでトランクスを生き返らせることには成功しましたが、悟空を復活させることはできず、何とか悟空を生き返らせようとみんなで思案しますが、悟空自身が「生きかえらせてくんなくていいや」と拒否。もう1つの願いをどうするかをみんなで考えている際、クリリンが神龍に『17号と18号をもとの人間にもどしてやってくれないか！！」と伝えます。しかし、神龍が「それはできない」と答え、1度は落胆するクリリン。しかし、すぐに「せめて　あのふたりのカラダの中にとりつけられている爆破装置を取りのぞいてやってくれないか！？」と神龍に伝え、それは可能ということで2人に取り付けられている爆弾を取り除くことに成功しました。トランクスがクリリンに「どうして今のような願いを・・・」と聞くと「だ・・・だってよ　かわいそうじゃねえか・・・・・・カラダん中に爆弾があるなんて・・・・・・」と答えるクリリン。天津飯が「なぜ17号の爆弾まで取ってやったんだ？」と尋ねると「たしかにオレ・・・・・・18号のことをスキだったけど、18号にはやっぱ17号がさあ　おにあいだろ」とクリリンは答えました。

◯自分の想いが報われなくても18号の幸せを願ったクリリン、そして、それを見ていた18号

　クリリンに『チビのおっさん』と罵り、立ち去ったはずの18号でしたが、神龍が現れた時に驚き、様子を見るため、すぐに宮殿に戻っていました。そのため、クリリンの行動を18号は全てしっかり見ていたのです。

　目の前でコントローラーを破壊した時でさえも、想いが大きく揺らぐことがなかった18号ですが、冷たくあしらい、立ち去ったすぐ後でも自分のことを思い、行動してくれるクリリンの様子を見て、18号のクリリンへの株価はストップ高を記録しました。いてもたってもいられなくなり、18号はクリリン達の前の飛び出し、クリリンに対して

「バーカ！17号とわたしはふたごの姉弟だよ！」

「だからって、その気になるなよ！！爆弾のことだって感謝なんかしてないからな！！タコ」

と言い放ち、傷心するクリリンの前から18号は立ち去ろうとしますが、その後、もう1度振り返り、「またな」と伝え、18号は宮殿から姿を消しました。

◯Z戦士の行動と応援が導いたクリリンと18号のハッピーエンド

　セルとの戦いから7年が経ち、38歳になったクリリンは18号と結婚、マーロンという名の女の子が生まれ、亀仙人とカメハウスで一緒に住んでいることが描かれています。めでたくハッピーエンドを迎えたクリリンと18号ですが、この2人が結婚した背景にはZ戦士達の行動と応援があったからということを忘れてはいけません。

　悟空が生き返ることを拒否していなければ、悟飯がセルを倒していなければ、ピッコロが18号にクリリンのおかげで助かったことを伝えていなければ、天津飯とヤムチャがクリリンが18号を神様の宮殿に連れていくことを拒んでいたら、2人が結ばれることはなかったと思います。そして、クリリンが神龍にお願いをした後、トランクスが「どうして今のような願いを・・・」、天津飯が「なぜ17号の爆弾まで取ってやったんだ？」と聞いたことでクリリンは初めて18号への想いをはっきり口にして、18号もそれを聞くことができました。Z戦士達の応援と行動がクリリンと18号を結んだことは間違いありません。

◯クリリンの人間的成長を象徴する出来事となった18号との結婚

　最後にクリリンと18号の結婚はクリリンの人間的な成長を象徴する出来事だと私は考えています。元々はいじめられっ子、調子に乗りやすく、悟空がチチと結ばれた時には悔しさを露わにするなど、人間的な弱さを見せる一面もありましたが、愛する人を命懸けで守り、例え自分の想いが叶わなくても相手の幸せを願うことは以前のクリリンではできなかったことだと思います。

　また、結婚後に悟空と再会した際、「ロボットなのにこどもできたのか・・・？」と質問された時も「ロボットじゃねえって・・・人間をほんのちょっと改造しただけなの」と細かいことは気にしない器の大きさを見せています。クリリンの人間的成長を象徴する出来事という背景があるからこそ、クリリンと18号の結婚は多くの人に応援されているのだと思います。


◯出典
・『ドラゴンボール1巻〜42巻』鳥山明(集英社)

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