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阪神タイガースファンが関西以外でも多い理由

 2023年シーズン、18年振りのセ・リーグ制覇を果たした阪神タイガース。以前、「なぜ阪神タイガースは大阪で愛されるのか」というテーマについて記事にしたことがあるのですが、最近、タイガースについて別の疑問が湧いてきました。

 「なぜタイガースファンは関西以外にも多いのか」

 甲子園球場で開催されるタイガース戦はほとんどの試合で満員の観客を動員しますが、他の球場でも多くのタイガースファンが足を運び、試合によってはホームチームのファンよりもタイガースファンのほうが多いこともあります。関西以外にも多くのタイガースファンがいることは当然のことだと思っていましたが、当たり前すぎて理由を深く考えたことはありませんでした。今回はなぜ阪神タイガースファンが関西以外でも多いのかを考えていきます。

◯後楽園球場のレフトスタンド

 後楽園球場は1988年に東京ドームが開業されるまで、読売ジャイアンツが本拠地として使用していた球場です。1980年代に後楽園球場で開催された読売ジャイアンツVS阪神タイガースの試合の映像をいくつか観たのですが、レフトスタンドはほとんどがタイガースファンで埋まっているように見えました。一方、後楽園で開催されたスワローズ、ホエールズ、ドラゴンズ、カープ戦を観てみると、ジャイアンツの選手がレフトスタンドへホームランを放った時、レフトスタンドの観客の中にも喜んでいる人がある程度は確認できるため、タイガースファンは他の球団と比べ、多くのファンがビジターの試合にも足を運んでいたのだと思います。

 私が確認できた最も昔の試合が1959年に長嶋茂雄さんがサヨナラホームランを放った天覧試合(VS大阪タイガース)なのですが、サヨナラホームランがレフトスタンドに入った瞬間、レフトスタンドで喜んでいる人はあまりいないように見えました。この時もレフトスタンドでは多くのタイガースファンが観戦をしていたのだと思います。

 今でこそ、プロ野球12球団それぞれが様々な取り組みを実施して、多くのファンを獲得していますが、ジャイアンツがプロ野球の象徴的な存在として圧倒的人気を誇っていた時代にも、多くのタイガースファンが関西以外の地域にいたことが分かります。

◯アンチ巨人の受け皿になっていた

 タイガースといえば90年代の暗黒期の印象が強い人もいるかもしれませんが、タイガースは歴史的に見れば、間違いなく強豪チームの1つです。例えば、ジャイアンツがV9を達成した1965年〜1973年の期間、タイガースは2位のシーズンが5回あります。この9年間でBクラスに沈んだのは1971年の1回だけです。

 また、ジャイアンツのV10を阻止したのが中日ドラゴンズということを知っている人は多いと思いますが、ジャイアンツがV9を達成する前年の1964年にセ・リーグを制覇したのがタイガースだということは知らない人もいるのではないでしょうか。その2年前の1962年にもタイガースはセ・リーグを制覇、1950年代もリーグ優勝こそないものの、6回の2位を記録しています。ジャイアンツが圧倒的な強さを誇っていた時代、そこに対抗していたのがタイガースだったのです。いくらジャイアンツが人気球団といっても、それを良く思わない人も当然います。そのアンチ巨人のいちばんの受け皿になっていたのがタイガースであり、何度もジャイアンツにチャレンジするタイガースに魅力を感じて、タイガースファンになった人も多かったのだと思います。

◯関東が本拠地ではないセ・リーグの球団も関東で多くの試合を観戦できる

 これは関東に限った話になってしまいますが、関東はセ・リーグの球団を応援するファンにとっては非常に環境が整っています。セ・リーグは2023年現在、読売ジャイアンツ・東京ヤクルトスワローズ・横浜DeNAベイスターズ・中日ドラゴンズ・阪神タイガース・広島東洋カープの6球団で構成されています。パ・リーグは多くの球団が本拠地の地域を移転したことがありますが、セ・リーグの6球団は長きに渡り、現在と同じ地域を本拠地にしています。ジャイアンツとスワローズは東京、ベイスターズは神奈川を本拠地にしているため、関東のタイガースファンは近場で観戦ができる機会に恵まれています。

 例えば、1985年のタイガースの日程を確認すると、後楽園球場で13試合、神宮球場で12試合、横浜スタジアムで11試合、合計36試合を関東で実施しています。2023年もタイガースは東京ドームで12試合、神宮で13試合、横浜で12試合、ベルーナドームで3試合、合計40試合を関東で戦っています。タイガースの試合を観戦できる機会に恵まれているため、関東に住んでいても、タイガースを好きになるきっかけが十分にあることが分かります。

◯1985年の日本一で一気に増えたタイガースファン

 1985年はタイガースが21年振りのセ・リーグ制覇、初の日本一に輝く年になりました。この年は関西だけでなく、タイガースの優勝が社会現象になるほど全国で盛り上がり、これをきっかけにタイガースファンは今まで以上に増えました。リーグ優勝を決めた神宮球場でのスワローズ戦や西武球場で開催された日本シリーズ第1・2・6戦はレフトスタンドや3塁側だけでなく、1塁側にも多くのタイガースファンが足を運んでいました。この年のタイガースは年間で219本塁打を放ち、当時のセ・リーグの年間本塁打の記録を更新、ランディ・バース、掛布雅之さん、岡田彰布さん、真弓明信さんといったスター選手が在籍しており、強いだけでなく、観ていてワクワクするチームだったと思います。そんなタイガースに魅力を感じ、この時にタイガースファンになった人が全国に数多くいたことは間違いありません。

◯「タイガースファンは弱くてもタイガースを応援する」は本当なのか

 「タイガースファンは弱くてもタイガースを応援する」、これに関して私は少し疑問に感じています。1985年にタイガースが初の日本一に輝いたことでタイガースファンが全国的に増えたことは間違いありませんが、その後、タイガースは長い暗黒期に入ります。それでも、タイガースファンが他球団と比べてファンが多かったことは事実です。しかし、私は1999年からプロ野球を観るようになったのですが、1999年〜2001年の3年間、最下位がほぼ確定した9月や10月の試合、甲子園での試合でさえもライトスタンドが半分ほどしか埋まっていないことが何度もありました。現在ではプロ野球の試合がレジャー化され、優勝の可能性がなくなっても、その1試合を楽しむために球場へ足を運ぶファンがどのチームにも数多くいます。しかし、プロ野球の試合がレジャー化される以前、タイガースが弱い時期、球場へ足を運ぶタイガースファンは確実に減っていました。星野仙一さんがタイガースの監督に就任した2002年以降は甲子園で開催されるタイガース戦で空席が目立つことは大きく減りましたが、2023年にタイガースが18年振りのセ・リーグ制覇を果たすまでの間、タイガースは何度も優勝争いをしており、決して弱かったわけではありません。そのため、私は「タイガースは優勝回数こそ多いわけでないが、強いチームなのでファンが多い」と思っています。そして、あと一歩で優勝を逃す機会が多いからこそ、「来年こそは」という思いになり、タイガースを応援する人が多いのだと思います。

◯黄色と黒には人を惹きつける効果がある

 これは少し番外編になるのですが、私はタイガースの黄色と黒のチームカラーがタイガースファンを増やす要因の1つになっていると考えています。

 まず黄色についてですが、黄色には明るさや元気などのポジティブな心理的な効果があるとされています。そして、黄色と黒はとても相性が良いそうです。実際トラはかっこいいですし、ひまわりもきれいですよね。サッカーでもドイツのボルシア・ドルトムントというクラブのチームカラーが黄色と黒なのですが、ドルトムントはホームで開催される試合の平均観客動員数が80000人を超え、世界を代表する人気クラブになっています。もちろん、色だけで人気が上がるわけではないでしょうが、黄色と黒は人を惹きつける効果がある組み合わせなのだと思います。

 SNSの登場で「映え」という言葉が一般的に使われるようになりましたが、黄色と黒の組み合わせは映えとの相性も抜群です。正直、タイガースは女性ファンの取り込みに関してはまだまだ伸ばす余地があると思いますので、このチームカラーを活かせば、さらにファンを増やせるはずです。

◯最後に

 阪神タイガースのファンが関西以外でも多い理由、実際考えてみると、非常に難しいテーマでした。私が取り上げた内容が全てではないでしょうし、私が知らないタイガースの魅力もたくさんあると思います。「こういうきっかけでタイガースファンになったよ」などございましたら、ぜひ、教えてください。


◯出典
・NPB日本野球機構 阪神タイガース年度別成績(1936-2023) 2023年10月7日
https://npb.jp/bis/teams/yearly_t.html

・げんまつWEBタイガース歴史研究室 2023年10月7日
https://www.genmatsu.com/index.html

・資格のキャリカ 色彩心理学における色の意味・効果|色が与える影響も解説あ 2023年10月7日
https://www.c-c-j.com/course/psychology/colortherapy/column/column07/

・超ワールドサッカー ドルトムント、過去5シーズンの平均観客数が8万人超! 浦和は世界48位 2023年10月7日
https://web.ultra-soccer.jp/news/view?news_no=353516

・阪神タイガース 優勝特設サイト 2023年10月7日
https://v2023.hanshintigers.jp/?_gl=1*1ciur6u*_ga*MTgxMTQ5ODg3NS4xNjk2Njc2MTM0*_ga_FW7QSW9G3F*MTY5NjY3NjEzNC4xLjAuMTY5NjY3NjEzNC42MC4wLjA.#_ga=2.204638352.1807225689.1696676134-1811498875.1696676134

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