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勇退の勇気

ディレクションに力を入れよう(というのは建前で、実際は納期が決められている仕事を避けたかった)と思い立ち。
「HPリニューアルもSEO改善もすべてやります」と営業し、見事掴み取った仕事は専門性の高い業界のtoB案件だった。

コーポレートサイトのガワ作成・保守や、オウンドメディアの立ち上げ、記事執筆までできれば、もはやディレクターというよりも一人親方である。
この案件を取るためにWebデザインを勉強してFigmaを使えるようになったし、HTML/CSSコーディングも勉強した。
実際にWordPressテーマの設定変更だけじゃなく、CSSやPHPまでいじれるようになったのは大きな資産だ。

しかし、結局のところ私のあとに「専門性が高い業界のSEO担当経験者」が現れてしまった。
やはりこの業界「経験者」に敵うものはない。
どの職業にも概ね当てはまるこの常識だが、ことSEOとなるとより色濃く経験の差が出る。
Web集客をはじめとするマーケティングは、何の業界で誰を顧客とするかでアプローチが異なる。
SEOライティングひとつとっても、一次情報だの権威性だの、経験が重視されるのだし。私に勝ち目はない。

サイト制作が終わり次第、もう一人にコンテンツ制作をまるまる渡すかたちで、この案件を終えることをクライアントに伝えた。
独りよがりにも見えるが、どれだけ探してもサイトリニューアル後の私の仕事がないのだ。

今、寂しい気持ちでこれを書いている。

私が本当にやりたいのはWeb制作ではなく、オウンドメディアの立ち上げ・運営だった。
執筆も分析も改善も自分。SEO運用者として、ライターとしての実務を積みたかった。

一つの企業のことをこれほどまでに考えた経験はなかった。
たった数ヶ月の仕事だが、それでも企業のコーポレートサイトを作るということは、事業理解や企業の信念、担当者の人柄などさまざまな想いに触れること。
愛着が湧かないわけがない。

プロダクトをもっと多くの人に届けることが仕事で。
だからこそ企業・プロダクト・働く人すべてにリスペクトが不可欠で。
だからこそ離れがたい。

私の実績として公開することを快諾してもらえた。
実績として公開できない記事ばかり書いていた私が、一人のフリーランスとして制作物と企業の名前を出せることが、どれだけ嬉しいことか。
エンドクライアントと仕事をすることの喜びを知った。

案件を終えることそのものも、フリーランスの仕事だなと痛感した一日だった。

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