ひきつづき全日本ベテランテニスへの出場を夢見てるけれど、一旦スクラッチから再挑戦しようと考えを改めた男の話①

 英語に“from scratch”という表現がある。「一から」とか「最初から」みたいな意味である。

その男は、昨年ふとしたきっかけでJOPベテランのシングルスの試合に出場をはじめた。テニススクールで以前同じクラスに在籍していた7つ8つ年下のマッチョでテニスが上手な知人から勧められたのがきっかけだった。「試合に出れば上手くなりますよ」という高校生以来30年ぶりくらいに聞いたアドバイスに、男は「確かにそうかもな」と思った。何より彼はとてつもなく上手いので、スクールでそのプレーを目の前にしていた男には、彼の意見は偉大な説得力を伴っていたのだ。

以来、男は多くの試合に出場してきた。2年目の2024年には、結構な数の遠征もしている。しかし、未だ2回した勝利したことがなかった。その男にとっては、JOPベテランのレベルは高過ぎるのだろう。大会にエントリーし出場するだけで得られるポイントや、悪天候や、対戦相手の体調や仕事都合などを理由とする不戦勝で得られるポイントなどで、1年半ほどが経過した現在、男には一定程度のポイントがあったが、全く男のテニスの実力を反映してはいないのだ。ちなみに、JOPベテランの大会のドロー(トーナメント表)を見ると、BYEとか、W.O.(ウォークオーバーと読む)とか表記されているのだが、不戦勝で得られるポイントとはW.O.の対戦予定者だった者が取得するポイントのことだ。まあ、JOPベテラン参加者以外には、どうでもいい話だ。

試合に出続ける中で、男は男なりに、色々と試行錯誤してきたし、今後も試行錯誤していくと思われる。しかし、先月のいくつかの大会であっさり敗北することが繰り返されたことで、男は「ダメだ、こりゃ。」と思ったのだ。男の気持ちは、伝わる年代には伝わることだろう。より具体的に言えば、「走れない、持久力もない、筋力もない、柔軟性も足りない、作戦もない、自信もない、勝とうという気持ちの強さもない」ではないか…、と偽りない自己評価に直面してしまったわけだ.男の気持ちは、これで年代問わずに伝わるかもしれない。そして、直近の大会の初戦であっさり敗北したことで、この自己評価は男の中で確信に変わったのだった。

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