犬王

面白かったと思うタイトルばかり取り上げるのもアレなので、たまには個人的にイマイチだったものも挙げようと思う。
履修してイマイチだと思うこと自体は結構あって、中には鼻で笑うレベルのものもあるのだが、中には友人知人は絶賛するが僕は支持しないというパターンもある。
そういったパターンのものを思い返したとき、最初に思い浮かんだのがこの「犬王」だ。

湯浅監督というだけで結構クセは強く、好き嫌いは分かれそうだなと思う。
僕自身はソコはあまり気にならないのだが、「犬王」に関してはそのクセが悪い方向に出ている気がして、残念ながら受け入れられなかった。
PV等の事前情報では結構気になっていて、劇場で観るつもりだったのだが、予定が空けられず他のことを優先しているうちに上映は終わってしまった。
その後アマプラに入った頃には友人知人から好評で、期待に胸を膨らませていたのだが、見終わった後には「劇場に行かなくて良かったな……」と思った。

フォローをすると、作画は(クセは強いものの)とても綺麗でよく動き、そんなコンテよく思いつくな〜!といったシーンは幾つもある。
女王蜂のアヴちゃんによる劇中歌もカッコイイし、まるで長編MVのようだ。
そしてその長編MVのようなところが全く持って映画として評価できない一番の理由でもある。
楽曲に支配されすぎた結果、犬王の物語はオマケ以下の扱いを受けていると感じた。
劇中の演奏シーンは楽曲のMVとして見るならば大変秀逸だが、音と絵の整合性は悪いし、踊りの様子や観客の様子は脈絡を感じない。
ミュージカルといえば聞こえは良いが、あの音楽と演劇が混ざり合う感覚が無くて、通して観る意味を探すことに必死になってしまった。
ファンタジーな表現も取ってつけたような印象があり、もっと運命的な輝きとでも言うべきか、ファンタジーを盛り込む説得力に欠けていると思う。

良くも悪くも挑戦的な作品だったと思っていて、それも湯浅監督だからできる挑戦だとも思っている。
作品としては僕の好みでは無かったが、また似たようなコンセプトで作品が公開されたら、それはそれで観るだろうから、作品や特定の何かについて特別アンチというワケではないことだけ明記しておく。

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