CUBE

これはホラーと言うべきか、ミステリーと言うべきか、SFと言うべきか、ヒューマンドラマと言うべきか、とても悩ましい作品である。
一時期は実写コンテンツでも「イカゲーム」等でブームになったデスゲームとも少し違う。
ただ、「CUBE」に代わる作品を僕は知らないので、これは「CUBE」という独立したジャンルなのかもしれない。
カモノハシかよ(セルフツッコミ)

「CUBE」の良いなと思うところは、結局のところこれは何だったのかという前後の物語が劇中に存在しないところである。
前々から言っているように、僕は作品として切り取られた時空間の前後があることを大事なファクターだと考えている。
しかし、中途半端なことをせず、バッサリと前後を切って作られたこの「CUBE」は、前後がないことでその不気味さや謎を強く印象的なものになっていて、魅力を持たせている。
密室空間の中でも無機質な立方体というところも良くて、そこに何らかの上位存在を感じさせない作りも同じ魅力に繋がっていると思っていて、その混乱の責任所在が分からないからこそ6人の疑心暗鬼がしっかり働いているのだと思う。

その設定や物語の流れは本当に素晴らしいのだが、少し引いた目線で見てみると実はかなりチープな低予算作品である。
前後が不明であることを面白いと評したが、逆に考えるとクリエイターなら身に覚えがあるだろうと思うが、「物語のクライマックスは思いついてるけど、そこに至るまでの過程が書けない」というアレにも見えなくは無い。
アイデア一つで名作にも駄作にもなり得たこの作品は、本当に紙一重を渡って今なお根強いファンのいる作品になったのだ。

確かな支持を得た「CUBE」は続編も作られているものの、こちらは見る価値が無いと思っている。
確かに「CUBE」の続編となっているのだが、流石に似た画が続いては飽きるし、その謎の空間の背景が語られたところで興醒めも良いところだった。
日本でも同じタイトルを冠し、本家の目も入った作品が作られたらしいのだが、きっと観てもガッカリするだろうと思って履修していない。
ついでに言うと、この手のドラマは邦画とは演技的に相性がとても悪いと思っているところもある。
「TUBE」というインスパイア作品と思われる作品もあって、こちらは職場の人が結構評価していたので履修したのだが、オリジナリティーの薄さに閉口した。
しかし、それだけ「CUBE」という作品が世界中に与えた影響は強く、それでいて二番を煎じることの難しさを物語っている。

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