リング

邦画ホラーの話をしようと思ったら、「リング」を避けて通ることはできない。
映像作品に留まらず、多くの和ホラー作品に多大な影響を与えている「リング」だが、原作は小説三部作。
二作目の「らせん」は映画化されていた気がするが、三作目「ループ」はどうだったかな……。
それほど映画としての「リング」のインパクトは強く、原作を離れて「リング2」のようなシリーズ化、そして「貞子」というキャラクターが独り歩きしていった。

内容としては当時には既に一つのジャンルとして確立していた「呪いのビデオ」にまつわる物語で、別の人に見せないと呪い殺される……という今や珍しさの欠片もない呪いである。
それを面白く見せているのは解除方法まで含めて一切の呪いの内容を伏せているところである。
謎の死の真相を探りつつ、「貞子」とは何者なのかを追っていくというストーリーがただの呪い話で済ませていないところだ。
意外にも貞子の登場シーンは少なく、マトモに登場するのはかの有名なテレビから這い出てくるシーンくらいで、それ以外はホラー描写はあるもののミステリーやサスペンスに近いと思う。
逆にそのワンシーンだけで世界中のド肝を抜いて今も愛される(?)キャラクターとなっているのが凄いというのが個人的な感想だ。

個人的に「リング」が今後も伝説的に語られるであろう要因に、公開当時(98年)の時代描写がある。
令和の現在において骨董品であるVHSやガラケーといったアイテムはむしろ目にする機会の方が珍しくなってしまった。
リアルタイムでは僕は幼少時なので記憶は曖昧なのだが、多分ガラケーもそんなに普及してなくて、ポケベルを持ってるとビジネスマンだな〜となっていた頃ではなかろうか。
日本の怪談と呼ばれる話は時代を感じるが故に味があると僕は思うので、多分今の世代の人が見たならば「リング」も大変味があって新鮮かつロマンティックなのではなかろうか。

「リング」といえば「きっと来る〜♪」という主題歌も有名だ。
映画を見たことがない人でもこのワンフレーズは口ずさめるのだが、フル尺で聞いたことがある人はそうはいないだろう。
映画の内容に対して結構明るくて浮遊感のある音使いのザ・90'sエレクトロニクスといった感じの曲なのだが、一体全体みんなはどこで聴いてサビだけ覚えたのだろうか。
現在も遊技機で大人気だというし、当時は遊技機のCMも平気で流れていたから、そのへんからだろうか。
同じく「実は〜」系の話は結構あって、僕が思わずへぇボタンを押した(時代よ)貞子にまつわる話だけでも「性別は半陰陽」「呪いの正体はメディアを通して感染するウイルス」「天然痘の怨念」「仮想世界のシミュレーション」「世界が尊敬する日本人100選に選出」と盛りだくさんである。
僕はホラーが得意ではないのでアレなのだが、好きな人はこういった深く細かい設定があることも「リング」の、ひいては貞子の魅力なのではないだろうか。

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