ドント・ブリーズ

「ドント・ブリーズ」はサイコホラーの常識を覆した作品だ。
一方的に嬲り殺されるケースが多かった中で、「強盗が返り討ちに遭う」という斬新な背景、そして追跡してくるのは盲目の老人というその情報だけで言えば襲い来る敵とは真逆の性質だ。
日本の家屋に比べて広いとはいえ、舞台も一軒の家屋というのも面白い。

盲目の老人は元軍人というバックボーンを持ち、失明こそしているもののその鍛えられた肉体とサバイバル能力でスマートに追い詰める。
狂気と凶器で理不尽に暴れるサイコホラーと違い、「刃牙シリーズ」で言うところの環境利用闘法で理を以て冷徹に襲い来るという恐怖は僕にとってとても新しかった。
住み慣れた自分の家という地の利も最大限に活かし、そしてこの事態を予言していたかのように張り巡らせられたトラップの数々にも元軍人ならではの警戒能力を感じ、どこか「メタルギア」のステルスミッションのような緊張感が常にあって退屈しなかった。
どんでん返しも多く、老人にもサイコキラーらしい秘密があったり、盲目故の弱点もあったりして形勢の入れ替わり、上手く躱したと見せかけてからのもう一回遊べるドン!という演出、とにかく観ていて退屈する暇が無い。
しかしハイペースということも無く、テンポの良さが光っている。

ここまで大絶賛の「ドント・ブリーズ」なのだが、調子に乗って出した「ドント・ブリーズ2」は自ら作品の持ち味を全て殺してしまったスーパー駄作である。
どれくらい駄作かというと傑作であった前作「ドント・ブリーズ」にすら泥を塗った気がする。
サイコホラーというジャンルだからこそ光った老人の得体のしれないプレッシャーや作品のスリルさは何もかも消え、取ってつけたような家族愛にスポットの当てられた「ドント・ブリーズ2」は、特有の悪いところが詰まった邦画と同じような残念さ、メジャーデビューしてシンセモリモリの恋愛ポップスばかりになったロックバンドのような画一的な作品に成り下がった。
前作の魅力でやってきたファンに失礼ですらある。
ラーメン食べに行ったのにオムライスが出てきた。
それもベチャベチャのお米で甘ったるいお子様向けのオムライスだ。
玉子の上のケチャップは超しょっぱいしかけ過ぎてる。
少なくとも方向性さえ一緒であればもう1作品くらい続編が出ただろうしそこそこヒットしたと思うのだが、これでは3作目が出たところで僕はスルーすると思う。

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