シャレード

世界が恋したオードリー=ヘップバーン女史の作品を履修せずには居られまい、と視聴したのが「シャレード」だった。
サブスク時代はユーザー目線ではメリットばかりで、昔TSU◯AYAで延々と探した挙げ句にレンタルに置いてなかっただとか、品の入れ替えや店舗間移動で無いとかなく、ポンと見られることが有り難い。

ロマンス女優といえば!というイメージを持って手に取った(とはサブスクでは形容し難いね)のだが、いきなりオードリー演じるレジーナの不倫と離婚から物語は幕を開ける。
オードリー作品=ロマンスで、純愛こそロマンスの大前提!といった気持ちでいたから、この作品がロマンスではなくサスペンスと気付いた時には、画面に映るレジーナを汚い言葉で罵った後だった。
兎にも角にも意地も悪けりゃ性悪の骨頂、そんなヒロインである。
ただ、タイトルをよく考えればサスペンスの匂いはしていて、僕の勝手な勘違いであることは認める。
シャレードってダイハツやんけ〜hahaha!くらいで読み流していた。

ピーター役(とここでは統一する)のケーリー=グラント氏を筆頭に、男性陣もレトロファンにはたまらないであろう男前な俳優陣が揃っている。
不思議なもので、オードリー女史の系統の顔は今も映画の主演女優に受け継がれている気はするが、ケーリー氏らのようなザ・男前という系統は主演男優には見かけない気がする。
平成からは男前に爽やかさが入ってきた印象だが、僕の偏見だろうか……。

肝心の内容だが、正直サスペンスとしてはあまり質が高くない。
というのも、ピーターは何重にも役を被っており、前半と後半で名前も変われば立場もキャラクター性も変わる。
こういった正体を偽装するスパイ的な活躍は切れ味がある反面、印象がボヤけてしまう。
ただでさえ主要人物は多く、ピーターの他にスコビー・ギデオン・テックスと3人が遺産を取り合い、ハミルトンも実の正体を持っている。
これは僕が日本人の顔にしか見慣れていないだとか、複雑な相関図を持つミステリーやサスペンスに馴染み深くないことも一理あるとは思うが、兎にも角にも「この人は何の誰だっけ」と混乱してしまうのだ。
レジーナも正直なところ自分を持っていないというか、結構他責的な思考と行動をするし、性悪女というキャラクターも相まってイライラ度が高い。
これは時代背景もあると思うので、当時はこういった多動な女性は少なかったのだろうし、振り回す女性を寛大に受け止める男がダンディーだったのかもしれない。
尤も僕もどちらかといえばヤレヤレと言いながら振り回されたいタイプだったりするのだが、なんかそういう可愛げのある振り回し方ではないのがちょっと頂けなかった。

とはいえ、スコビーとの追いかけっこや外壁の攻防はスリリングだし、鉄道に逃げ込んでからの緊張感はそれまでのどこかコミカルな様相と打って変わってヒリヒリする。
舞台装置で罠を張るシーンなんかは手に汗握る名シーンだった。

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