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阿良々木暦になりたい君は。


どうしようもなくお人好しな男の友人がいる。
人が困っていたら真っ先に手を伸ばす。
周りの人の幸せを本人以上に喜び、悲しみを自分の事のように心を痛める人だ。

アジカンが好きな友人の結婚式の招待状の返信葉書にソルファのジャケットを目一杯描いていた。普段から絵を書いている話は聞いたことない。恐らく手慣れないながら懸命に筆を動かしたのだろう。見せてもらった招待状は眩しいほど書き込まれていた。美しかった。

また、ある時から友人が
「ナツコは気づいていなくても、俺はナツコに救われた事があるから困ってる時は絶対にいつだって手を貸すから」としきりに言う様になった。

そんなかっこいいセリフは初めて言われた。
さらに、友人の言う通りさっぱり心当たりがなかった。
別の女友達に私の恩はなんだったのか聞くと
友人が失恋してとても落ち込んでいる時に私と何回か呑みに行って元気付けられたからだと言う。本当に些細な事だった。友人本人からしたら大きな出来事だったとしても、絶対にいつだって手を貸すなんてなかなか言えない。
私だって大好きな人と別れた時、呑みに付き合ってくれた友達はいたが誰だったか覚えていない。

友人は物語シリーズが好きだった。
阿良々木暦の様な人間になりたいと言っていた。正義感があり、自分が傷つくのを厭わない人間になりたいと。

その友人を阿良々木くんと呼ぼう。そして先述した友人の失恋した相手、羽川さんと呼ぶ事にする。戦場ヶ原さんよりも羽川さんの方が雰囲気が似ている。そして羽川さんと同じくらい可愛い。

物語シリーズとは違い、その後羽川さんは阿良々木くんの事を恋愛対象として好くことはなかった。

でも阿良々木くんはずっと羽川さんが好きだった。阿良々木くんの気持ちを知ってか否か、その後もよく2人で遊びに行っていた。そして今もずっと仲良くしている。阿良々木くんは羽川さんの事を好きなまま、羽川さんは阿良々木くんの事を恋愛対象としてみることはないまま。

羽川さんは阿良々木くんに付き合うつもりはないと意思表示はしているらしい。
阿良々木くんはそれでもよいと言う。

2人がそれでいいというなら外野が口を挟む必要もないだろう。でもなんとなく腑に落ちないのだ。

阿良々木くんの熱量に負けて、羽川さんは阿良々木くんとお付き合いした。それも長くは続かなかった。阿良々木くんと羽川さんがお別れした。それから5年経った。その5年間、阿良々木くんの心は羽川さんに捉われたままだ。バカみたいにずっと羽川さんの事が好きだ。

物語シリーズの阿良々木くんも周りに慕われている。こっちの阿良々木くんだって、阿良々木くんの事が大好きな人達がたくさんいる。私だってもちろんそうだ。

いくら羽川さんだって阿良々木くんの良心につけ入り、親切心だけを吸っていくのは許せない。

阿良々木くんから聞くところによると
羽川さんは舞台俳優が好きで、ライブビューイングに行くのに阿良々木くんと車で一緒に行ったらしい。阿良々木くんは舞台俳優など少しも興味ないのでそれはもう完全にアシとして使われている。

もう羽川さんは阿良々木くんを解放してほしい。拘束しているつもりもないのかもしれない。アシにするぐらいなら関わらないでほしい。これ以上阿良々木くんを無為に傷つけないでほしい。

困った事に、阿良々木くんも羽川さんから解放される気がない。良い様に使われている事に快感があるのだろうか。阿良々木くんが羽川さんと手を切りたいと望めばいつだって切れるのに。

俺の幸せは皆の幸せの二の次だよ

阿良々木暦になりたい君は言う

それにしたって自分の幸せを蔑ろにしすぎではないだろうか。なんとか新しい一歩を踏み出してほしい。

君が手助けしてほしいと望めば
何本だって手を貸してやる。
その準備はできているのに。
自分で全部抱えてしまうんだ。


阿良々木暦になりたい君は
そんなとこまで似なくていいんだよ。

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