うどん

私が小学生の頃、福岡に住んでいた。
海が近かったので、よく家族で海岸の方にドライブに行った。
海岸沿いの道は美しく、道路沿いにはドライブインのような店がたくさんあった。
夕日が美しいレストランにもよく行ったが、一番、思い出に残っている店は、まだ店の数も少なかったチェーン店のうどん屋だった。
小屋のような建物だが、駐車場も十分にあり、様々な人たちに重宝されていた。
なにか働いている店員がきびきびと、それでいて優しく接してくれて「アットホーム」そのものという店だった。
私は毎回「ごぼう天うどん」を頼んでいた。
おそらくそれはその店の一番人気のメニューだったと思う。
麺は柔らかい麺で、讃岐とは違い「博多うどん」と呼ばれる麺だ。
また、特にごぼう天うどんは、だしを吸うので、だしをたっぷり入れたやかんが、店のあちらこちらに置いてあり、自由にどんぶりにつぎ足しできるようになっていた。
また私はうどんと一緒にサイドメニューの「かしわめし」を注文していた。
味は少し濃い感じだが、十分染みたごはんは絶品だった。
注文の仕方も常連客は赤鉛筆で「正」の字を注文書に書いていく形式で、なんとも素朴なやり方だった。
その後、私は福岡を離れ大阪に住んでいたが、5年前に、また訪れる機会に恵まれたが、店の建物も店員の雰囲気もまったく変わらず、タイムスリップしたような不思議な心境になった。

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