高校野球

中学校1年生の時に、叔父の母校である高校が甲子園に出場することになった。
日頃から陽気な叔父の笑顔が目に浮かぶようだった。
夏、叔父が横浜からやって来て「一緒に甲子園に行こう!」と誘ってくれた。
試合当日、甲子園球場に着いた私たちは、叔父の母校の生徒が球場の周りに集まっていた。
叔父は早足で生徒たちの方に進んでいった。
「僕はだいぶ前の卒業生なんだ」
叔父はにこやかに話しかけた。
「こんにちは!」
野球部のユニホームを着た生徒たちも大きな声であいさつをした。
叔父は財布を取り出して、3千円を取り出した。
「これは寄付だからね」
その当時の私はなにか「三千円」がすごく大金に思えた。
しかし、叔父にとって「有効な使い道」となったことは間違いない。
5年前、1年間の闘病生活の末、亡くなってしまい、その思い出も話すこともなかったが、今でも千円札を見ると、叔父のことを思い出すことがある。

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