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日本の羊毛産業 始動

以前「日本で羊毛産業が定着しない理由」という記事を書きました。日本の牧場でとれたウールは夾雑物が多い事を除いては外国産のウールと比べても品質的には劣っていないことがわかりました。しかし日本の羊毛を取り巻く環境が整っていない為にこれまで日本の羊毛産業は定着してきませんでした。そういった問題に真正面から取り組み、日本の羊毛を広めようと活動があるのをご存じでしょうか。ジャパンウールプロジェクト(JWP)という活動で、「日本のウールを使い、日本の工場で、日本のツイードを作る」を目標に活動されています。

日本の羊毛産業の現状

日本の羊はそのほとんどが食肉用として飼育されています。羊毛は買い手が少なく食肉の副産物といった立場です。刈ったばかりの羊毛にはゴミや脂が付着しており、このゴミや脂を取り除かなければ商品としては使えないのですが、副産物である羊毛に対して手間をかけられる牧場もそう多くはなく、しかたなく廃棄する牧場も少なくありません。

分ければ資源、分けなければゴミ

当然ですが羊は動き回ります。食事をし排泄も行います。その為、苅りたての羊毛には植物性のゴミの付着や糞尿や泥汚れが付いており、まず最初の作業としてこういったゴミや汚れた部分を取り除く作業をしなければなりません。この仕分け作業を「スカーティング」と言います。汚れの酷い部分は商品にはなりませんし、ゴミなどはその後の工程の機械トラブルの原因となります。まずこのスカーティングを行うかどうかで羊毛が資源となるかゴミとなるかが決まります。現状国産羊毛は副産物という位置づけなので手間をかけることができず仕分けも行われていないのが現状です。

羊毛を洗う手段が無い

現在日本の国内には洗毛工場がありません。公害問題・環境保護の観点から国内の洗毛工場はすべて廃止されました。現状は主に中国やアジア各地で洗毛を行いそこから世界へ輸出しています。現在日本の羊毛を使用している人は主に個人で手間をかけて手洗いする人や、染毛工場で頼み込んで洗ってもらうなどで対応しています。

まずは第一歩

現状日本の羊毛産業は毛刈り後の最初の工程「スカーティング」、そしてその次の工程「洗毛」で既に行き詰って一歩も進めず止まったままとなっています。なのでまずは第一歩を踏み出そうと、羊飼いがスカーティング技術を学ぶ場をJWPが作る事から始めるそうです。最初は2021年の毛刈りの時期(4月)に講習会を行う予定との事。課題はまだまだ山積みだとは思いますが一歩前進となりそうです。こういった活動がある事を一人でも多くの方に知ってもらってその活動の後押しになればと思います。そして今後もJWPの動きに注目していきたいと思います。

参考文献
スピナッツ出版 2020 SPINNUTS.No.107


1890年創業の羊毛商社のウールショップーJK WOOL

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World of woolは創業1890年以来の羊毛原料商が運営する羊毛を中心とした天然繊維の魅力を発信するオウンドメディアですが、実は羊毛原料のECサイト "JK WOOL"も運営しているんです!

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