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羊毛を化学構造から徹底解説!ー羊毛の7不思議ー

羊は全世界に3000種類確認されていると言われており、それぞれが生息する場所も極寒、温暖、熱帯と様々です。身にまとっているその繊維は生体を保護するために重要な役割を果たしています。羊毛繊維は構造や性質の異なる多くの細胞の集合体で実に巧妙に創られた卓越した繊維です。その特徴を「羊毛の七不思議」と題してこれまで語られてきました。
今回はそんな「羊毛の七不思議」を紹介したいと思います。

1. 水をはじくが水を吸う

 まず羊毛の表皮組織は多層構造になっています。ウールの服を着ていて、雨に打たれても軽くならウール繊維の一番外の層は水をはじく性質なので手でさっと払うことができます。その反面汗をかいたらウール繊維が湿気を吸収して体はベタつきません。これはウール繊維の内側の層が吸湿性に優れた構造になっているからです。外側の層はスケールと言われる鱗のような形になっており、スケールは濡れたり、強い摩擦が加わると開いて、内部が露出し、湿気を吸収します。このように吸湿と水をはじく矛盾した性質を持ちます。ウールの吸湿力は綿の約2倍、アクリルの7倍、ポリエステルの40倍と言われています。

2. 良く染まり色落ちしにくい

 羊毛は綿や絹にくらべて発色性に富み、非常に深い色合いを生み出します。これはウールを構成しているアミノ酸が19種類もあり、広範囲で染料の分子と結合できる為です。さらにその吸湿性の高さから染料が十分に浸透する為色落ちしにくいといわれています。

3.汚れにくい

 羊毛の表面はスケールと呼ばれる鱗状になっていますが、これが羊毛内部を保護するバリアとしても知られています。表面がエピキューティクルという膜で覆われており(人間の髪のキューティクルと同じ)これが汚れや水をはじきます。

4.水を吸うのに保温性はすぐれている

 羊毛繊維が濡れても、表面は疎水性で水をはじき、水の熱伝導を抑えて保温性を保ちます。そして繊維内部に吸収した水は吸着熱を発生します。この吸着熱は綿の2.5倍、ポリエステルの20倍にもなります。羊毛は含水率が33%までは羊毛繊維内部に貯め込むことができます。貯め込んだ水が繊維内部から移動する際、スケールが発散の障壁となって急激な発散を抑えて気化熱による熱損失を制御する結果となります。

5.燃えにくい

 ウールを燃やすと毛髪や羽毛と同じように特有の臭気を発して燃えますが、自然に火は鎮火します。これはウールを構成する成分が関係しています。
羊毛の元素分析によると炭素が48~50%、水素が6~7%、窒素が15~16%、硫黄3~4%から構成されています。また含水率も公定水分率で15%と高い為燃えにくいと言われています。また溶融せず炭化する為ひどいやけどを負う危険性も低くなります。

6.紡ぎやすさとフェルト性

 羊毛繊維には天然の捲縮(ちぢれ)が存在する事から繊維同士が絡みやすく、捲縮の多いものほど紡績性に優れると言われています。また、
ウールの表面はうろこ状のスケールで覆われておりこのスケールが水分を含むと開き、開いた状態で摩擦など圧力を加えると開いたスケール同士が絡み合い離れなくなります。洋服が縮む原因はこの表面のスケールで、縮む現象をフェルト化と言います。このフェルト化は羊毛繊維独特の現象です。
古来からこの羊毛のフェルト性を利用して各種の衣料製品や工業製品が開発されています。

7.形状記憶性があり弾力性に富む

 変形しても再び元の原型に戻る現象は羊毛繊維にも認められており、形状記憶と言われています。これは羊毛がもつ捲縮(ちぢれ)による効果です。捲縮は羊毛の構造自体にある為、糸や織物、カーペットに加工される過程で何度伸ばされてもまた元に戻ります。羊毛繊維を水中で30%伸長しても元の状態に戻り、これを繰り返しても元の状態に戻るという特性を持っています。
この捲縮こそが人間が衣料や寝具に羊毛を選んだ最大の理由です。もし羊毛がまっすぐな繊維だったら優れた保温性や強い弾力性もなかったでしょう。


いかがでしょうか。ウールはとても不思議な繊維です。ウールの中にいくつもの矛盾がありそれらが一つになってできています。
「天然繊維の王様」と言われる事もあるウールは化学繊維にはない魅力がつまっています。いまだ人間の化学ではウールを超えるものは作り出せていません。まさに生きた繊維です。


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