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【尼】アフリカの国内退避民と今後の国連の課題。

2023年、3月9日。ISWAP(イスラム国西アフリカ共同体)によりナイジェリア北東部にあるボルノ州ムクドロ村で36人の漁師を殺害され、数十人が誘拐された。

生存者によると殺害された漁師たちはティクワの町から来た国内退避民であると述べている。

報告を受けたMNJTF(西アフリカ多国籍軍)は同地域に到着後、遺体を回収。連れ去られた民間人の捜索活動を行ったが、未だ発見されていない。

記事・弱体化するハラムと拡大するISWAP


アフリカにおける国内退避民とガンパラ条約

国内退避民(IDP-internatinal displaced person)で、国際法による難民の定義と異なる。

国内退避民の保護、支援を目的とする国際法はアフリカ諸国にのみ適用され、アフリカ連合に加盟する54か国のみが対象となる。

2009年、アフリカ連合によってカンパラ条約は制定され、この条約は「当該国がまず国内退避民に対して責任を負うことを前提とし、国や地域における国内退避民を各国、国際機関が支援する」というものだ。

UNHCRの同地域での活動は?

日本にも支部局を置き、第三国定住などを主に支援しているUNHCRは加盟国の国内法がガンパラ条約に反映されるよう努力はしているが、これはUNHCRによる加盟国の立法と行政権への干渉とも取れてしまう・・・・

(アフリカでは1000万人近い国内退避民がおり、そのうち7割の人々がUNHCRの支援を受けているとされている)

アフリカ国内だけで約700万人の国内退避民を庇護するUNHCR。支援、保護する・・・UNHCRを非難したいわけではないが、被害にあった漁師たちに対して事前に「ISWAPの勢力が北東部で勢力を拡大しつつ、ムクドロ村は攻撃の対象になる可能性が非常に高い」と避難指示を同地域の行政と共に行えたはずだ。

それを同組織が怠ったとまでは言わないが、実際に避難指示を行わず、虐殺が発生してしまったのは事実だ。

700万人の数字と支援、保護とは…

700万人の国内退避民を支援、保護しているUNHCR。700万人という数字は少し誇張しすぎではないか?

確かにその様な数字を挙げられば多くの人々が同組織に対して関心を持ち、寄付や支援を行い、それにより多くの退避民に安全を提供できるのは分かる。

(まあ、筆者は人道支援及びその支援が正常に運営されるのあれば誇張PRに対しては否定的ではない。)


退避を拒否する国内退避民の問題

しかし、国内退避民が移住地域から自己的に退避しないなどの問題点も挙げられる。日本UNHCRもミャンマー内戦でタイやバングラディッシュの難民キャンプに退避した人々に日本への移住などを提案しているが、難民の多くは「自国が安定化するまで難民キャンプで生活する」など提案を断るというケースも多い。

上記は日本UNHCRの難民の意思について語ったが、ナイジェリアにおける国内退避民にも同じことが言えるであろう。

今後のナイジェリア政府と西アフリカ多国籍軍

2009年以降、ISWAP(当時はボコハラムと同じ組織)はソフトターゲット(公共施設、民間施設への攻撃)を行っており、ナイジェリア北東部でのハラムとISWAPの過激活動以降、65000人の人々が亡くなっており、同地域周辺で210万人の人々が今もなお危険に去らされている。

ナイジェリア北東部でのISWAPの活動を抑えるため、西アフリカ多国籍軍は2023年はISWAPの殲滅に尽力し大規模な戦闘の準備を始めている。

同国に諸外国の実例が当てはまるわけではないが、政府と反体制派及び過激派の和解が実現された例はいくつもある。

ナイジェリアのブハリ政権が終え、ボラ・ティヌブ大統領が今回当選した。

ティヌブ政権による国内の治安回復とISWAPへの対応に関心が高まる一方だ。


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