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ー 絵本をめぐる旅 ー 絵本専門士の制作ノートから

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連載「絵本をめぐる旅」では、ワールドライブラリーの絵本専門士が作品に込められた想いを紐解き、時には制作時のエピソードも交えながら、絵本の向こう側に広がる世界をご案内します。
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記事一覧

ー 絵本をめぐる旅 ー 絵本専門士の制作ノートから(1) 『ピンクー にじのでるばしょ』

第1回は、『ピンクー にじのでるばしょ』(スペイン)をめぐる旅です。 自分の居場所を探す旅へ たまごのころから、違っていた。ピンクーは大きなピンク色のモンスターです。自分はみんなと少し違う。もしかしたら、だいぶ違う。みんなと同じようにふるまうのはむずかしい。みんなと同じふりをしようとしても、うまくいかないし、本当はそんなことしたくない。 「自分は誰とも違う」ということ。そのことに最初に気付いたのはいつだったでしょうか。誰とも違う自分。はじめて気付いた瞬間、それはとても大き

ー 絵本をめぐる旅 ー 絵本専門士の制作ノートから(2) 『ピゾンカさんのたまご』

一冊の絵本にも、完成して子どもたちの手に届くまでにたどってきた長い道があります。作者は、画家は、どのような想いをその作品に込めたのでしょうか。世界中の数多くの絵本の中から私たちが一冊を選び、日本の読者の皆さんにお届けするには、それぞれに違った理由やエピソードがあります。文化も言語も異なるところで生まれた絵本たち。その翻訳編集では、翻訳家と編集スタッフがキャッチボールを繰り返し、検討を重ねて、原書の表現にふさわしい最善のことばを目指して心を尽くしてきました。 連載「ー 絵本をめ

ー 絵本をめぐる旅 ー 絵本専門士の制作ノートから(3) 『ちがうけれど、いっしょ』

一冊の絵本にも、完成して子どもたちの手に届くまでにたどってきた長い道があります。作者は、画家は、どのような想いをその作品に込めたのでしょうか。世界中の数多くの絵本の中から私たちが一冊を選び、日本の読者の皆さんにお届けするには、それぞれに違った理由やエピソードがあります。文化も言語も異なるところで生まれた絵本たち。その翻訳編集では、翻訳家と編集スタッフがキャッチボールを繰り返し、検討を重ねて、原書の表現にふさわしい最善のことばを目指して心を尽くしてきました。 連載「絵本をめぐる

ー 絵本をめぐる旅 ー 絵本専門士の制作ノートから(4) 『おおかみの兄弟』

第4回は、『おおかみの兄弟』(フランス)をめぐる旅です。 ちいさな兄弟、姉妹たちへ海外の絵本でも、日本の作品にも、はじめて弟や妹を迎えた第一子をテーマとした作品たちがあります。きょうだいができるうれしさとともに、自分だけが世界の中心にいたはずが、これまでとは違ってくることへの戸惑いや、新しい家族にみんなが夢中になってしまったときの寂しさ。 こどもたちは、まだうまく表現できない自分の気持ちを絵本のおはなしに投影し、安堵してとても満たされます。大人も読みながらちいさなお姉さん、