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“ファム・ファタル”に魅入られた画家。ギュスターヴ・モロー展

『ファム・ファタル』とは、フランス語で「宿命(運命)の女」という意味になる。

ファム・ファタルと聞くと、どうしても『傾国の美女』『悪女』のイメージが強いけれど、運命的な恋愛相手という側面もあり、古くから画家や詩人の恋人はファム・ファタルとして表現されてきた。
『神曲』に登場する、ダンテにとっての永遠の恋人ベアトリーチェは、その最も有名な例ともいえる。

というわけで、今回観に行った展示は『ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち』
ギュスターヴ・モローは19世紀フランスの画家で、まさしくファム・ファタルを描くことに取り憑かれたのではないかと思えてしまう画家だ。

副題にある『サロメ』とは、元々新約聖書に出てくる少女。
ヘロデ王の宴席で素晴らしい舞を踊ったサロメは、褒美に「洗礼者ヨハネの首」を求めたという物語です。
実はヘロデ王の後妻がヨハネに結婚を邪魔されたため、自分の連れ子であるサロメに、そのように要求するようにそそのかしたのですが、(こっちの方がよっぽど悪女なのでは!?)時代と共にだんだんとお話が変化していき、サロメは自らヨハネの首を求めるファム・ファタルのイメージがついてしまいました。

モローのファム・ファタルは母親と恋人?

一人の画家のみを取り扱った展示は、その画家の内面、さらには生涯にわたる作風の変化や時代によるテーマが見えるのが楽しいところ。
モロー展では実生活で愛した母親や恋人を起源として、モローにとっての『ファム・ファタル』を追っていく展示方法でとっても面白かったです。
母親が理想の女性像になる芸術家は多いので、マザコンとか言ってはいけない……。

絵画ではヨハネの生首が乗った盆を持つサロメ像が多いのですが、モローの描くサロメで一番有名なのは、宙に浮かんだ生首を踊り子の格好をしたサロメが指さすというシーンになります。
かなり荒いタッチでありながら、背景の装飾部分は線画でかなり細かく描かれており、線画だけが浮き出た特殊加工のような効果をもたらしており、ついつい精一杯顔を近づけて眺めてしまいました。
(図録の表紙も線画加工がされていて、特殊加工好きの自分は反射的に買ってしまった……)

展示はサロメの他にもモローが描く様々な女性が出てきます。
ヘレネ、スフィンクス、セイレーン、エヴァ、クレオパトラ……。
それぞれどんな女性なのか解説付きなので、とてもわかりやすいです。
そして神話や伝説を元にしたモチーフが多いので、厨二心をもりもりくすぐられます。
特に動物に化けて誘惑するゼウスとの絡みが多い。うん、まあ……。

帰りは一つ上の階のカフェでケーキセットのコラボをやっていたので、ひと休みしていきました。

あべのハルカス美術館は今回初めて行きましたが、ミュージアムショップはチケットなくても自由に出入りできてオシャレだし、景色は眺めもよいので、のんびり美術鑑賞するにはぴったりですよ~


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