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歩く旅人の宿命

今日は珍しく天気がいい。

目の前に広がるアイスランドの地形は目まぐるしく変化し、羊の親子も瞬く間に遠ざかっていく。
空に浮かぶ雲を追い越し、アイスランド語の標識は今まで以上に読めなくなっている。

数日前に感じていたこの国の冷たい風は、ガラス一枚を隔てる事で何も感じることができない。その代わりに、生ぬるい風が頭上からぬるりと降り注いでいる。

僕はそのぬるり風の出口を左手でそっと閉めた。


歩き旅を終え第二の都市アークレイリから首都のレイキャビクへのバス移動。


バスの車窓に流れる景色は、アイスランドに初めて降り立った頃に見ていれば、窓に張り付くように見ていた景色かもしれない。

でも、今はなにか違うものを見ているようだ。

見慣れてしまったのだろう。

人間とはほんとそんな生き物だ。

簡単に慣れやがって。


そして、アークレイリのキャンプ場に2泊して、なか日を街歩きの日にしていた。

結果何をしたかというと、それらしい観光地に立ち寄るもあまり心が沸き立つこともなく、市民プールに数時間滞在し、ファミリーで賑わうプールの脇にあるサウナルームでご年配の男女と無言で汗を流すという始末。

その後、アークレイリ中のスーパーを転々とし、食材を漁る。

この日一番嬉しかった事は安くてうまいラム肉を買えた事だ。


これが歩き旅に魅力を感じてしまった男の末路だろう。

かと言って今日もハイキングに行くかというと、僕は行かない。もう旅は終わったんだ、重たい荷物を背負って歩く必要はない。

これから向かうレイキャビクでの一番の楽しみは、宿にキッチンがある事だ!
そして、ベッドで寝ることができる。

日中は本当に何をしよう。

本当に。

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