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『未来づくり』って曲なんだけど...

『未来づくり』って曲なんだけど...

もしNスタの該当インタビューで「人生の1曲は何ですか?」ときかれたら「これ!」と答える1曲。ニッチすぎておそらくそのインタビューは地上波で使われないだろうがこの1曲。この曲は秋田氏の思考の原点が詰まった1曲だ。いってみよー。

『思えば僕はずっと僕の事 嫌いだったんだ僕の事 忘れてたよ何でだろう 多分あなたに出会ったからです。』文字起こししてみたら改めて素敵だ。嫌いな自分を忘れるほど、あなたに出会ったことには大きな意味があると。秋田氏がそこまで言える出会いとは一体どんな人なんだろう。同時に私にもそこまで言えるような出会いがあることを願う。『時が過ぎることは怖くない 明日はきっと素晴らしい これはそんな歌』いつになく晴れやかな秋田氏。そこはかとない美しさに、かえって不気味さを含ませつつ、どこか掴みようのない構成でサビまで来た。大人向けの子守歌のような安心感がある。

『and I will say ありがとう ただいま じゃあね』ここで一つとてつもなく珍しいと感じたのが、秋田氏が英語を使ったことだ。秋田氏はインタビューで英語は使わないと答えている。「単純に違和感が嫌いだからです。洋楽も英語を使うアーティストも好きですが、僕は普段日本語しか喋らないわけですし」。そんな秋田氏が今回あえてシンプルな英語でサビを始めたのはなぜだろう。私は、このサビは英語でしか歌えないからだと考えた。この構文はI[S]will say[V]ありがとう[O]の構文だ。日本語で歌ってしまうと私は[S]ありがとうを[O]歌う[V]という方になってしまう。あえて[O]を最後に置くことで人の印象に強く残す。秋田氏が何よりも伝え方に重きを置いているからこそこのような美しい表現を思いつくのだろう。『永遠はこんな風に 当たり前にできていくのかな』永遠とは我々が概念的に捉えているものであるが、一方で身近な存在でもあり、当たり前の積み重ねなのだという気付きを、なんと曲にするとこんなにも優しく伝わるものなのか。耳が幸せ。

『思えば僕はずっと逃げていた 愛するのも愛されるのも 向き合うことは怖いからな さらけ出した心は尚更』自分や他人と向き合うことは本当に怖い。嫌いな人と同棲するようなものだ。変な話、向き合わなくても生きていける分、よりタチが悪く逃げ回り続ほうがよっぽど考えなくていいから楽だ。しかし秋田氏はそれらと向き合うことに決めたのだ。それはとても勇気のいることだろう。

『きっと損をしてた 今までの信じようとしない僕は それを取り戻すよ』きっとそうなんだろうな。数えることはできないが、信じない分損をしたことは多いはずだ。この歌はシンプルでわかりやすい。いい意味で小学生が聞いても理解できるだろう。説明一つとってもそうだが、意外と簡単な言葉を使い続けるのは難しい。大人になると自然と使い勝手の良い言葉をたくさん覚え、便利言葉に逃げてしまう。そんな中秋田氏はあえて平易な言葉を意識して歌い上げている。なぜかって。これはそんな歌だからだ。

『今までの事なんて帳消しにしたいんだけれど 今日までの失敗なんて破り捨ててしまいたいけれど こんな僕だからこそあなたが好きになってくれたっていうなら もういいよもういいよ それだけでもういいよ』秋田氏に限って言えば、ここでいうあなたは彼女に限ったことではなく、友人や母でも当てはまるのだろう。確かに私も手放したくなるくらい自分が嫌になったり、眠れないくらい失敗に苦しむことがある。しかし一人でも肯定してくれる人がいたならば、その人のために頑張ろうと思えるし、「もういいよ」っていう満身創痍な表現も的確だろう。特にSNSで攻撃が容易になったこの時代だからこそ、発信者、クリエイター、インフルエンサーにはこの考えが非常に大切になってくるのではないだろうか。聞くべきは匿名の一文より目の前で見てくれている人の一言だ。『胸張って僕は僕だって言ったっていいでしょ いつだってここに帰ってきたっていいって言ってよ 僕は精一杯僕を肯定するよ ただ僕を信じてくれたあなたを肯定するために』僕は僕って豪語することがどれだけ難しい事だろうか。帰りたいっていうことがどんなに口にしずらい事だろうか。そんな小さいプライドや意地が我々を生きにくく知る。「言ったっていいでしょ」「言ってよ」という人称をまたぐ表現には、生きにくさを知っているからこその優しい想いが込められているように感じる。信じてくれたあなたを肯定するために自分を肯定するという歌詞も素敵だ。手放しで自分を肯定できない人にこそ、誰かを肯定するためには自分を肯定してやることから、という方程式をぜひプレゼントしたいものだ。

ここまで聞くと『未来はこんな風に当たり前に出来ていくのかな』という歌詞は、不器用で、当たり前が当たり前に出来なく、当然やってくるはずの未来へ向かう途中、紆余曲折してしまう不出来な人間に、秋田氏なりの生き方の指標を示してくれているように聞こえる。

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