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#36 アインシュタインの言葉

 こんばんは。今夜某放送局で放映していたドキュメンタリーの最後に表題にあるアインシュタインの言葉が紹介されました。どのように紹介されたかというと、海外の環境保護の活動家のオフィスのドアにこの言葉が掲げられていて彼らは、毎日この言葉を肝に銘じて一日の活動をしているというものでした。日本人として胸にグサリと刺さったので紹介します。

 アインシュタインがこの言葉を発したのは、当時のナチスの悪行に対して何も行動を起こさない人々を叱咤、鼓舞したものですが、現代の今日的な地球規模の課題に対しても同じように相通じるものがあります。


 日本の企業はこれまで涙ぐましい努力で燃費のよい車や排出ガスの少ない車、電力がすくなくてよい家電製品などのいわゆる「省エネ」で世界をリードしてきたのは間違いなく事実です。それはそれとして素晴らしい成果で世の中に貢献してきました。でも、もうみなさんもうすうす気づいていると思いますが、時代は日本の省エネが通用する時代はまもなく終了するのです。もうハイブリッドじゃ世界に通用しなくなるのです。ヨーロッパやアメリカはCO2排出ゼロに完全にシフトを変えつつあるのです。残念ながら、日本だけが悠長に考えているとしか思えません。(やっと菅総理が遅ればせながら2050年CO2ゼロを公に発表しましたが)

 もちろん全ての日本人がそのような認識だとは思いませんが、たいていの日本人がまだ日本は世界第3位の経済大国だから大丈夫だ、何とかなると心の底で思っているのではないでしょうか。でもこの認識の甘さが蔓延していること自体が日本の国の衰退をまねく非常に危険なもののように私には思えてなりません。

 これは歴史的には、太平洋戦争終末時の世相とにているように私には思えて仕方がありません。ご存じの通り、太平洋戦争初頭では日本の快進撃がありました。それを支えていたのが1941年当時世界第一の性能を誇る零戦の活躍でした。この零戦の活躍に国民は酔いしれ、向かうところ敵なしの状態で大いに歓喜していました。これが日本は絶対負けないといった過信を生み出し、毎日B29が飛来して敗戦が決定するまぎわまで、零戦は世界一優秀な戦闘機という認識を大半の日本人のだれもが改めなかったのです。だから零戦のマイナーチェンジの改良機は出現しましたが、零戦を圧倒的に凌駕するようなさらなる戦闘機の出現はありませんでした。
 ところがこの間、欧米はこの零戦を徹底的に研究しつくし、その弱点を見つけ、零戦に対抗できる戦闘機(グラマンF6Fなど)を開発したり、零戦の攻撃に対する防御策を考案し、高性能のレーダーや原子爆弾に匹敵する開発と言われたVT信管(砲弾の先に電波発信機を取り付け、障害物に近づくと自動で起爆装置がはたらくもの、要するに命中しなくても撃ち落してしまう恐ろしい武器)を開発するに至ったのです。(ちなみにこの恐ろしいVT信管の砲弾が実戦配備されたのは1944年6月のマリアナ沖海戦からでした。この時は日本の航空部隊がVT信管の砲弾のえじきになり、「マリアナの七面鳥狩り」といわれたほど、いとも簡単に日本機を撃ち落したといわれています。砲弾が命中しなくても飛行機の近くで自動で破裂するのですから。)

 それに対して頼みの日本の陸海軍は、日本の武器は世界でも優秀なのだから、あとは兵士の敢闘精神が大事であるといった精神論で兵士を鼓舞するだけ。1942年6月のミッドウェー海戦でアメリカ海軍に大敗北を喫しても認識を改めず、日本には世界一のゼロ戦と戦艦大和が健在だから大丈夫と誰もが思っていたと言われています。結局のところ零戦の優位はわずか一、二年のことだったのです。
 当時巨額の国家予算を投じて建造され、世界一と日本が誇っていた戦艦大和に至っては、欧米は艦の大きさを日本と競うような愚かなことはしませんでした。それより性能のよい潜水艦の建造に目をつけていました。どんなに戦艦が巨大な砲を備えて海の上では無敵でも、海底の潜水艦の攻撃には全く無力だからです。さらに、大きな船は小回りの効く潜水艦の格好の餌食となる運命でした。なぜなら的があまりにも大きいからです。こんな簡単なことが、当時の思考停止状態に陥った日本軍にはわからなかったのです。


 認識をなかなか変えられないのは、現代の日本にもあてはまると私は思っています。高度経済成長を実現し、焼け野原から世界史上まれなる奇跡の復興をとげ、アメリカに継ぐ世界第二位(今は第三位)の経済大国になったのが戦後の日本社会です。右肩上がりの業績で多くの日本の企業が発展してきたことは事実です。省エネで性能のよい日本製品は海外ユーザーから高い信頼を集め高価で取引されてきました。

 ですが、時代は変わってきているのです。まもなく省エネが世界に通用しなくなる時代が目と鼻の先にあるのです。世界が求めているのは省エネやハイブリッドで「減らす」のではなく、「ゼロ」にすることなのです。世界はまちがいなくエネルギー転換、CO2ゼロの方向に進んでいるのです。

 10年前に起きた東日本大震災で福島の原発がメルトダウンを起こした事実はまだ記憶に新しいものです。この事故から日本は何を学んだのでしょうか。原発がダメなら前時代の火力発電でと逆行してしまったのが日本のエネルギー政策でした。原発からのエネルギー転換は遅々として進まないのはどうしてでしょうか。残念ながら日本の原発事故を大いに教訓として学んだのはヨーロッパ各国でした。特にドイツはいち早く原発ゼロを世界に向かって宣言しました。そしてこれからは化石燃料に頼らない再生可能エネルギーを主体としたエネルギー政策に具体的に転換しているのです。日本の原発事故から学んだのは、一番被害を被って苦労している日本ではなくて、ドイツなのです。その隣国オランダの国鉄は今では100%北海の海の中に立てられた膨大な数のプロペラの回転を動力とした風力発電で毎日運行されています。

 過去の歴史から明らかなように、日本人は過去の栄光にすがってしまうあまり、思考停止状態に陥り、なかなか認識を改められず、リアルタイムに変化する世界の趨勢から取り残されてしまうことは、歴史が証明しています。

 日本がまだ世界に誇れるものは決して少なくないと思います。CO2ゼロにだって本腰を入れて取り組んでいけば、かなり世界に貢献出来ると思います。そのためには日本人一人一人が認識を改め行動を起こしていかなくてはいけない時期がもうすでに到来してると言いたいのです。

 冒頭のアインシュタインの言葉、日本語の訳すると以下のようになります。

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 最後に社会科の授業の中で実際に子どもから教えられた矛盾を紹介します。

ー先生、日本は原子爆弾を落とされた唯一の被爆国で、他の国よりも核の恐ろしさを身にしみて知っていて、日本人はみんな核はこりごりだと思っているのに、なぜアメリカやロシアの核兵器に反対しないのですか?―

子どもたちの素朴な疑問には、大人の複雑な事情なんかは通用しません。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 

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