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#28 子どもたちに伝えたい伝説のスピーチ

 令和になり、大型台風やゲリラ豪雨などの異常気象や地震や火山爆発などの自然災害、そしてウイルスのよるパンデミックなどで地球環境が悪い方に変化してきているとだれもが感じ始めてきています。

 さかのぼること9年前、2012年にウルグアイ国のムヒカ大統領が国連環境会議リオ+20で行なった伝説のスピーチは、残念ながら今も色あせることなく異彩を放っています。以下そのスピーチの日本語訳の抜粋です。これは、社会科や総合的な学習で是非活用して子どもたちに考えさせたい資料です。

 私の頭の中にある厳しい疑問を声に出させてください。午後からずっと話されていたことは持続可能な発展と世界の貧困をなくすことでした。私たちの本音は何なのでしょうか?現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか?
 質問をさせてください。

 ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億〜80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?可能ですか?それとも別の議論をしなければならないのでしょうか?なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか?


 マーケットエコノミーの子ども、資本主義の子どもたち、即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作って来たのです。マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。
 私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか?あるいはグローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか?このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなの世界を良くしていこう」というような共存共栄な議論はできるのでしょうか?どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?

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 このようなことを言うのはこのイベントの重要性を批判するためのものではありません。その逆です。

 我々の前に立つ巨大な危機問題は環境危機ではありません、政治的な危機問題なのです。

 現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。消費が社会のモーターの世界では私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。
 このハイパー消費を続けるためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。ということは、10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです!そんな長く持つ電球はマーケットに良くないので作ってはいけないのです。人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。これはまぎれも無く政治問題ですし、この問題を別の解決の道に私たち首脳は世界を導かなければなりません。
 石器時代に戻れとは言っていません。マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。昔の賢明な方々、エピクロス、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。

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「貧乏な人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

 これはこの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。
 私は国の代表者として、リオ会議の決議や会合にそういう気持ちで参加しています。私のスピーチの中にはみなさんにとって耳が痛くなるような言葉がけっこうあると思いますが、みなさんには水源危機と環境危機が問題源でないことを分かってほしいのです。根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということ。
 私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。でも、世界でもっとも美味しい1300万頭の牛が私の国にはあります。羊も800万から1000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。こんな小さい国なのに領土の90%が資源豊富なのです。
 私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜか?バイク、車、などのリボ払いやローンを支払わないといけないのです。毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。
 そして自分にこんな質問を投げかけます:これが人類の運命なのか?私の言っていることはとてもシンプルなものですよ:発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。
 幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。
 ありがとうございました。


世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ

 実は環境問題の加害者は私たちで、被害者は私たちの子孫かもしれません。



 2016年にムヒカ大統領は来日しています。その時日本の私たちへ次の言葉を残しています。

 「私は聞いてみたい。今日の若者は物がない昔の若者より幸せなのか。今の日本はあまりにも西洋化してしまい、本来の歴史やルーツなどはどこに行ってしまったのかと聞きたくなる。私はペリー提督や外国人を受け入れていなかった時代の日本を訪問した時のことが書かれた本をよく覚えている。当時の日本人は『西洋人は泥棒だ』と思っていた時代だね。あながち間違っていなかったけど。日本人はとても賢かったと思うよ。だって彼らは気づいていたんだ。西洋の進んだ技術にはとても対抗できないから、当時の日本人は勝てる技術を作ろうと頑張ったんだ。そしてそれを成し遂げたんだ。しかし今の日本人は昔の日本人の魂を失ってしまった。昔の日本人はすごく強かったんじゃないかな。多くの障害を乗り越える強さを持っていた、それがあなたたちの先祖なんだよ。江戸時代、人々は金が無くても人は幸せだった。仕事は午前中で終わり、午後から人々は風呂に行き落語を楽しんだ。その中でつつましやかな生活をしていたんだ。」

 ムヒカ大統領は子どもの頃、移民としてウルグアイにやってきた日本人から昔の日本の素晴らしさを聞いたそうです。江戸時代は高度なリサイクル社会で、物には魂があると誰もが信じ、大切にしました。(古来日本人は古いものに宿る魂を付喪神[つくも神]と呼んでいました。)使い捨て文化から一番遠かったのが日本だったのですね。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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