#79 授業の中で、わかるとは...
分数の加減乗除の意味がわからなくても計算の仕方さえ覚えてしまえば答えは出せます。漢字の学習では、覚えることと漢字の意味や成り立ちがわかるということが切り離されていることが多いです。だから作文の中では覚えたはずの漢字が使えません。
子どもたちは、知識を「覚えるべきもの」「やらねばならぬ苦役」「他人から教えてもらうもの」という感覚が学年があがるにつれ強まっていると思います。したがって、子どもたちは、未だに「勉強とは誰かに教えてもらうこと」と思っていることが多いようです。
では、「わかる」とはどういうことでしょうか。
「わかる」とは、「わかり直す」ことではないでしょうか。子どもたちが算数の勉強をしています。できる子どもは簡単なので、わずかな時間で解いてしまいます。そこで、わかっている子たちにわからない子どもたちの横で教えるように指示します。その後、わからない子どもたちに尋ねます。「本当にわかったのかな」「ううん、なんとなく」という返事。わかっている子どもに「相手が本当にわかったと納得するまで教えであげてね」という指示を出します。
そうしているうちに、内容をわかっていたはずの子どもたちが「わからなくなってしまった」という声を上げることがよくありました。それでいいのです。それはわかったと思っていたことが、友達に説明しているうちに、自分の中にわかっていない部分を発見することになったことの表れだと思います。そこから理解を深めるための「わかり直し」が始まります。何度かの「わかり直し」をへてその子どもにとって本当の知識が獲得され、本当に理解したことになっていくのだと思います。
授業というのは、ある意味この「わかり直し」を通して理解を深めていくことだと思います。「わかる」ことを「わからなくする」ことを経由して「わかる」ようにするのがポイントなのだと思います。「待てよ」「えっ、わからなくなった」「やっぱりそうだ」「そういうこともあるのか」
そんな子どもたちのつぶやきが授業の中で表れたとしたら、それは学習が深まっている証だと思っていいと思います。
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